【日独比較】5)政策の違い

気候変動

日本の電力政策は「安定性」を重視する傾向が続いています。その割には停電時間は日本の方が長いですが(参照:前項)。
ドイツの電力政策は再エネ導入を増やす方向で進んでいますが、その方向性にはEU指令が大きく影響しています。

■日本の電力政策

日本の電力政策の根幹となっている法律が「電気事業法」です(1964年成立)。
この法律をまとめると、
・規模の経済を認める。
・発送電一貫の独占的供給を認める。
・総括原価方式を認める。
といった性質です。
何度も改正が行われており、2018年の改正では連系線の利用ルール、電力市場、原子力発電の費用の見直しなどが行われました。

1998年には、「地球温暖化対策推進法」が成立しました。京都議定書に対応するための法律で、国・地方自治体には温暖化対策計画を義務化、事業者には努力を求めるものでした。
2021年に改正され、「2050年カーボンニュートラル」が盛り込まれました。2020年の菅首相(当時)による宣言を実効化するための改正です。

2002年、エネルギー政策基本法が成立し「エネルギー基本計画」が定められました。
2021年の第6次エネルギー基本計画では、安全性、安定供給、経済効率性、環境への適合を図る「S+3E」が重視されています。

2011年には、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(略「再エネ特措法」)が公布されました。
FIT(固定価格買取制度)の根拠となる法律です。

■ドイツの電力政策

ハイデルベルグ(ドイツ)|出典:GAHAG

2000年、再生可能エネルギー法(EEGが制定されました。再エネの導入目標や、FIT(固定価格買取制度)の根拠となっています。EEG制定の背景には、緑の党の政権与党入りが影響していると言われています。
EEGは2009年に改正され、固定価格の引き上げ、系統運用者(TSO)への系統拡張や運用最適化が義務化されました。
2012年に再改正が行われ、買取価格の見直し、風車の建て替えの促進、太陽光の買取上限などが盛り込まれました。

2010年には、ドイツ政府の目標として「エネルギーコンセプト」が策定されました。2050年までに一次エネルギー消費量を50%削減するという目標です。

■EUの政策

出典:Unsplash

EUの「指令」は加盟各国の法令の上位に位置する目標です。達成手段は各国に委ねられています。

1996年に、「域内電力市場の共通ルールに関する指令(IEM指令=第一次電力自由化指令)」が発効されました。この指令によりEU加盟各国で電力自由化が進展しました。

2001年には、「再生可能資源からのエネルギーの利用の促進に関する指令(RES指令」が発効されました。これにより、再エネの普及が進展しました。

2007年、「エネルギー・気候変動政策(20-20-20政策」が発効されました。
これは2020年までに、
・温室効果ガス排出量を20%削減(1990年比)
・総エネルギー消費に占める再エネの割合を20%に引き上げ
・エネルギー効率を20%改善
という3つの目標を定めるものです。

■まとめ: 日本は安定性を重視。ドイツはEU指令の影響大。

日本の電力政策は「安定性」を重視する傾向が続いています。
ドイツの電力政策は再エネ導入を増やす方向で進んでいますが、その方向性にはEU指令が大きく影響しています。

※アイキャッチ画像:PixabayによるPixabayからの画像

タイトルとURLをコピーしました