■「三体」を読んだ
中国SFの大作「三体」を読みました。
概略としては、「宇宙人からの侵略に立ち向かうSFもの」と言えるでしょう(乱暴)。
古今東西やりつくされたテーマではありますが、内容は「めちゃくちゃ面白い」の一言に尽きます。
日本でいえば「ガンダム」、アメリカでいえば「スターウォーズ」に相当する、世界共通SF物語と言っても過言ではないでしょう。
■科学用語の解説
本作品には科学系の用語がたくさん出てきます。
作中でも説明してくれるので、前提知識がなくても楽しんで読めます。
しかし、科学にそれほど詳しくない私にとっては「なにそれ?」みたいな用語もけっこうありました。
そこで、「文系出身で理系用語にはあまり親しみがない方」に向けて、本作をより楽しんで読めるように5つの用語を解説してみます。
とはいえ私も素人なので簡略化しすぎな点や、間違っている点があるかもしれません。あらかじめご了承ください。
1)三体問題
恒星や惑星などの天体の軌道は、2つまでなら予測可能だが、3つを超えると予測不可能になるというものです。
太陽系も天体が3つ以上存在するため長期的な軌道は予測不可能なはずですが、太陽や木星に比べて他の天体の質量が極端に小さいため、「制限三体問題」として軌道の予測が可能となっています。
2)超弦(ひも)理論
引用元:https://infowolves.com/string-theory-explained-for-beginners/amp/
時空の4次元(縦×横×高さ×時間)+ 7次元の、計11次元で宇宙は成り立っている、とする考え方です。
後半の7次元は、物質を構成する粒子の裏側にある「ひも」を示しています。
現在の物理学の最小単位である「素粒子(そりゅうし)」の中に、残り7次元が「ひも」のような形で隠されている、と考えると分かりやすいかもしれません。
5、6、7次元目などの各次元が具体的に何を表しているかは、正直私には理解不能ですが。
3)粒子加速器
電磁場で陽子や電子などの粒子を加速し、衝突・破壊させることで素粒子の構造を分析する機器のことです。素粒子物理学の研究に欠かせないものです。
機器というにはあまりにも巨大で、大きなものだと全長30kmにもおよぶものもあります(CERNの大型ハドロンコライダーなど)。加速のための助走距離が必要で、長大になっています。
4)宇宙背景放射
宇宙の全方向で観測できる、絶対温度約3Kの電波です。別名「宇宙マイクロ波背景放射」ともいい、ビッグバンの名残りでありその証拠と考えられています。
過去に何枚も画像が撮影されていますが、見ても何が何やらさっぱりわかりません。
5)強い相互作用
自然界の4つの基本的な力のうちの一つで、別名「強い力」ともいいます。
4つの力のうちでは、この「強い相互作用」が最も強く、次に「電磁力」、3番目に「弱い相互作用」、最弱が「重力」となっています。強い相互作用は、原子核単位の非常に近い距離でしか働かないとされています。
!!ネタバレ注意!!
ここからはネタバレを含みます。
■本書のメッセージ
「謙虚になれ」と「卑屈になるな」。
この二つが物語全体に染み渡っているように感じました。
三体文明にとって「虫ケラ」でしかない人類が、相討ち覚悟で和平にまで持ち込めた根底にも、この2つのメッセージがあると思います。
■その他感想
冒頭の文化大革命のシーンは結構退屈で、読者の離脱率を高めているように感じました。実際私は一度飽きて、読むのをやめています。半年後くらいにもう一度読み始めてやっと読了できました。
本書を読み始めて「これ、つまらんな・・・」と思われた方は、「4 科学境界 四十数年後」の章あたりから読み始めた方が良いかもしれません。一度飽きてしまった私が言うのもなんですが、途中でやめてしまうのはもったいないくらい面白いので。
それと、登場人物の名前が中国語なので覚えにくいという難点もあります。要は慣れの問題ですが、私は登場人物の名前を日本語読みで覚えていきました(おうびょう、しきょう、じょういし、ようとう、等)。その方が楽でした。
三体世界では文明が復活するスピードが速すぎるような気もしますが、生命の誕生・進化のペースは星によって大幅に異なるのかもしれません。
陽子を智子に作り替えて地球の科学の発展を阻害する情報兵器として活用したり、地球艦隊一千隻をたった1台の探査機の体当たり攻撃で壊滅させたり、三体文明が強すぎて地球側がまるで相手になっていないのが面白かったです。
日本語訳は2巻目の「黒暗森林」までしか出ていないので、3巻目の「Death’s End」を英語版で読むしかないのが残念です(日本語版は2021年出版予定)。ただでさえ難しい科学用語を英語版で読了できるか心配ですが、とりあえずサンプルをダウンロードしたのでトライしてみたいと思います。
アニメ・ドラマ・映画など各種メディア化も進行中のようで、そちらも楽しみです。