土地の利用に関しては、都市計画法や建築基準法など、各種法律で規制されています。
この記事では、各種法律ごとに誰の許可が必要なのかまとめます。
まずは一覧表です。
都道府県知事の許可 |
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都道府県知事への届出 |
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環境大臣の許可 | 国立公園(普通地域以外) |
環境大臣への届出 | 国立公園(普通地域) |
市町村長の許可 | 生産緑地地区 |
道路管理者の許可 |
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河川管理者の許可 |
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海岸管理者の許可 | 海岸保全区域 |
港湾管理者の許可 |
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文化庁長官の許可 |
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次に、各種法令ごとに管理者を見ていきます。
1. 自然公園法
- 工作物の新築・改築・増築
- 鉱物や土石の採取
- 広告物の掲出・設置など
以上の行為を行うためには、以下の行為が必要となります。
国立公園
特別保護地区、特別地域、海域公園地区内
環境大臣の許可が必要。
普通地域
環境大臣への届出が必要
国定公園
特別保護地区、特別地域、海域公園地区内
都道府県知事の許可が必要。
普通地域
都道府県知事への届出が必要
2. 都市緑地保全法
- 建築物や工作物の新築・改築・増築
- 宅地の造成、土地の開墾、土石や鉱物の採取などの土地の形質の変更
- 木竹の伐採
- 水面の埋め立て・干拓など
以上の行為を行うためには、以下の行為が必要となります。
特別緑地保全地区
都道府県知事の許可が必要。
緑地保全地区
都道府県知事への届出が必要
3. 生産緑地法
- 建築物や工作物の新築・改築・増築
- 宅地の造成、土石や鉱物の採取などの土地の形質の変更
- 水面の埋め立て・干拓など
以上の行為を行うためには、以下の行為が必要となります。
生産緑地地区
市町村長の許可が必要。
4. 地すべり等防止法
地すべり防止区域
- 地下水を誘致・停滞させる行為で地下水を増加させるもの、地下水の排除を阻害する行為
- 地表水を放流・停滞させる行為そのた地表水の浸透を助長する行為など
以上の行為を行うためには、都道府県知事の許可が必要となります。
ぼた山崩壊防止区域
- 立竹木の伐採・樹根の採取
- 木材の滑下・地引による搬出など
以上の行為を行うためには、都道府県知事の許可が必要となります。
5. 急傾斜地の方かいによる災害の防止に関する法律
急傾斜地崩壊危険区域
- 水を放流・停滞させる行為その他浸水を助長する行為
- ため池・用水路などの急傾斜地崩壊防止施設以外の施設または工作物の設置・改造
- 土石の採取・集積など
以上の行為を行うためには、都道府県知事の許可が必要となります。
6. 土砂災害警戒地区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律
土砂災害特別警戒区域
- 都市計画法の開発行為で、予定建築物の用途が制限用途であるもの(特定開発行為)をしようとする場合
都道府県知事の許可が必要となります。
※「制限用途」とは、自己居住用ではない住宅、社会福祉施設、学校および医療施設など、災害弱者関連施設。
7. 土壌汚染対策法
要措置区域内
土地の形質の変更をしてはいけません。ただし、以下の場合は例外となります。
- 都道府県知事から支持を受けたものが指示措置等として行う行為
- 通常の管理行為、軽易な行為
- 非常災害のために必要な応急措置として行う行為
形質変更時要届出区域内
土地の形質の変更に着手する日の14日前までに、都道府県知事に届出が必要です。ただし、以下の場合は例外となります。
- 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為
- 形質変更時行為要届出区域が指定された際、既に着手していた行為
- 非常災害のために必要な応急措置として行う行為
8. 公有地の拡大の推進に関する法律
都市計画施設の区域
- 土地を有償で譲渡しようとする場合
都道府県知事または市長への届出が必要となります。
9. 森林法
地域森林計画の対象となっている民有林(保安林などを除く)
- 開発行為(土石又は樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為で、一定規模を超えるもの)
都道府県知事の許可が必要となります。
※立木の伐採には、市町村長への届出が必要。
保安林、保安施設地区内
- 立木の伐採
- 竹の伐採・立木の損傷
- 家畜の放牧
- 下草・落葉・落枝の採取など
以上の行為を行うためには、都道府県知事の許可が必要となります。
10. 道路法
道路使用(占有)
- 電柱・電線・変圧等・郵便差出箱・公衆電話所・広告塔等の工作物の設置
- 水管・下水道管・ガス管等の物件の設置
- 鉄道・軌道・歩廊・地下街等の施設の設置など
- 水面の埋め立て・干拓など
以上の行為を行うためには、道路管理者の許可が必要となります。
道路予定区域
- 土地の形質の変更
- 工作物の新築・改築・増築・大修繕
- 物件の付加増置
以上の行為を行うためには、道路管理者の許可が必要となります。
※「道路管理者」は、国道・都道府県道・市町村道でそれぞれ変わります。国道の場合は国土交通大臣、都道府県道の場合は都道府県、といった具合です。
11. 河川法
河川区域、河川保全区域、河川予定地
- 土地の掘削・盛土・切土などの土地の形状を変更する行為
- 工作物の新築・改築・増築など
以上の行為を行うためには、河川管理者の許可が必要となります。
※「河川管理者」とは、国土交通大臣、都道府県知事、市町村長などです。
12. 海岸法
海岸保全区域
- 土石・砂の採取
- 土地の掘削・盛土・切土など
以上の行為を行うためには、海岸管理者の許可が必要となります。
※「海岸管理者」とは、都道府県知事、市町村長などです。
13. 港湾法
港湾区域、港湾隣接地域
- 港湾区域内の水域・公共空地の占有
- 港湾区域・公共空地における土砂の採取
- 港湾の開発・利用・保全に著しく影響を与えるおそれがある一定の行為
以上の行為を行うためには、港湾管理者の許可が必要となります。
※「港湾管理者」とは、港湾局、地方公共団体です。
14. 文化財保護法
重要文化財、史跡名勝天然記念物
- 現状変更、保存に影響を及ぼす行為
文化庁長官の許可が必要となります。
まとめ:
「ここは全体主義国家か?」というくらいに、見事に規制だらけです。
こんなに規制だらけだったら、新しく事業を始めようとする人が少ないのも当然です。
「など」とか「その他」とかの、役人がいくらでも都合良く解釈できる言葉が至る所にちりばめられているのも小憎らしいです。
一方では、これらの規制のおかげで「国民の安全・安心な生活」が守られているとも言えます。
※出展:合格しようぜ! 宅建士 2016 音声付きテキスト&問題集 上巻[宅建業法・法令上の制限]。以下、出展元の記載がない場合は同著からの引用。