私道って車庫や駐車場として使っていいの?

リフォーム・DIY

物件の価値を高めるため、駐車場スペースを確保できないかを調べていた。
結局、「難しい」という結論に至った。

敷地の形態

私は、上の図のような形をしている土地を所有している。
「家」部分には、車庫がない。入居者さんには近隣の駐車場を借りてもらっている(月7,000円)。
駐車場代が不要になれば、家賃が7,000円安くなるのと等しい効果が得られる。

私道は車庫として利用できない

「私道」部分は私が所有している土地のため、「どう使おうと所有者の勝手だろう」という解釈も考えられる。
しかし、「私道」であろうが「道路」であることに違いはない。

「道路」を勝手に使ったら、警察の取り締まりを受ける可能性がある。
近隣への迷惑も考えられる。

緑の部分が隣家の所有部分。

書店で私道や車庫に関する法律を調べていたら、次のような判例が見つかった。

  • 法定通路について駐車を認めなかった事例
  • 二項道路について保管を認めなかった事例
  • 私道所有者による保管を認めなかった事例

「二項道路」は物件調査の際にもよく目にする用語だ。

「二項道路」とは、建築基準法42条2項で定められている道路のこと。
4m未満の幅しかないために本来は道路とは認められないが、再建築時にセットバックする(建物を敷地の奥に立てることで道路幅を確保すること)条件で、道路として認められている。

私の敷地の私道部分は4m以上の幅がある。よって、「二項道路」には該当しない。

しかし、「私道所有者による保管を認めなかった事例」という判例を見る限りでは、私道を車庫代わりに使うのは基本的に認められていないようだ。

道路以外の場所に自動車の保管場所を確保しなければならない

諦めきれずにインターネットを調べていたら、私道の車庫利用を更に否定する材料が多数見つかった。

私有地であっても不特定の人や車が自由に通行できる場合は「道路」

長ったらしいが、大阪府での2004年の判例を引用する。
後で要点をまとめるので、読み飛ばしていただいても構わない。

■申請者の主張:
自動車保管場所として申請した場所は、豊中市建設指導課の判定のもと、私道並びに道ではなく、宅地扱いであるとの判断の結果、確認申請の許可書も下りており、申請の場所に車を保管することは何ら違法性もなく自分の宅地に車を保管するのは当然である。

□警察署長の判断:
保管場所法に規定されている「道路」とは、道路法第2条第1項に規定する道路及び一般交通の用に供するその他の場所である。
「一般交通の用に供するその他の場所」とは、私有地、公有地の別に関係なく、また、一般的な道としての体裁の存否にかかわらず、不特定の人や車が自由に通行することができ、かつ、その実態のある場所であることから、申請に係る場所は、「一般交通の用に供するその他の場所」に当たり、保管場所法第3条の規定に抵触し保管場所としての要件を満たしていない。

◆結果:
申請に係る場所は、舗装された住宅街の生活道路と一体となっていること及び実際に不特定の人や車両が自由に通行していることが認められることから、「一般交通の用に供するその他の場所」に当たる。
また、最高裁判例によると「たとえ、私有地であっても、不特定の人や車が自由に通行できる状態になっている場合は、道路である。」と判示していることから、原処分時において、警察署長が、申請に係る場所が道路上の場所であると認定し、法に定められた保管場所としての要件を満たしていないと判断して、自動車保管場所証明書の交付を拒否した処分を行った措置は、何ら違法ではない。
として審査請求を棄却した。

※出典:「自動車保管場所証明申請についての不可処分および審査請求棄却」|内閣府

要は、「実際に不特定の人や車両が自由に通行していることが認められる」のであれば、私道であっても公道と同じ扱いを受けるということ。
公道には駐車はできない。つまりこの場合、私道には駐車不可ということになる。

私の土地の場合、階段があるため車は自由に通行できないが、歩行者は自由に通り抜けが可能だ。
上記「実際に不特定の人や車両が自由に通行」には完全には当てはまらないが、グレーな状況といえる。

道路は車庫ではありません

法律の条文も見てみた。

■第三条:
自動車の保有者は、道路上の場所以外の場所において、当該自動車の保管場所を確保しなければならない。

※出典:「自動車の保管場所の確保等に関する法律」|法令データ提供システム

「私道」も道路の一部。道路を車庫代わりに使うことはできないと明言されている。

(隣人)「迷惑しています。」

実際のトラブル事例を大手小町から引用。

いつも駐車している車が、エンジンが掛らなくなったと言い、ずっと放置しています。
迷惑を掛けてすまない等、謝罪も一切ありません。掛らないのだから、仕方ないだろうという態度です。
私道を自己所有のように使用しているA家に、止めさせる手立てはないのでしょうか?
近所だから・・・とこちらも考えてきましたが、すごくストレスです。

※出典:私道を駐車場代わりに使用する隣家|大手小町

逆の立場の人(隣家)からの書き込み。
「警察や行政はトラブル解決のために全く動いてくれない」という話だ。
うがった見方をすれば、「やったもん勝ち」の状態を作り上げることも可能と言える。

そうは言ってもこんな状況を作り上げてしまえば、入居者さんは板挟み状態になってしまう。
貸主からは「ここに駐車していいですよ!」と言われ、
隣人からは「ここに停められると困る!」と言われてしまったら、入居者さんは困り果ててしまうだろう。入居者さんに長く住んでもらうためには得策とは言えない。

一筋の可能性:「ポール等を設置して道路性を排除」

次のような判例も見付けた。
また長いので、あとで要約する。

■申請者の主張:
当該場所は、建築確認を受けた建築物の敷地と、自動車を保管するため建築確認後に敷地を借り増した部分であり、保管場所として問題ない。

□警察署長の判断:
保管場所法に規定されている「道路」のうち、「一般交通の用に供するその他の場所」とは、不特定の人や車が自由に通行することができ、かつ、客観的に見て、これらの者の交通の用に供されている場所であると解されているところ、当該場所は、公道から引き続き舗装され、道路の体裁を有しており、公道と私道との判別も付かず、通行を制限する設備や立て看板等もないことから公開性も認められ、現況は道路である。

◆結果:
保管場所の届出者は、不受理処分の取消しを求めて横浜地方裁判所に提訴したが、平成16年5月、訴えの全部を取り下げ、被告である警察署長がこれに同意したことから、和解が成立した。
その後、当該場所にポール等の工作物を設置して道路性を排除した上で、軽自動車の保管場所の届出が行われ、警察においてこれを受理している。

※出典:「軽自動車に係る保管場所届出について不受理処分。その後、和解。」|内閣府

要は、「私道部分をポール等で区切れば車庫として利用できる可能性がある」ということだ。
下図のような形になる。

この状態でも接道部分は2m以上確保されているため、再建築は可能だ。

ところで、隣家の車庫は隣家の敷地内にある。

現在、私道の行き止まり部分は、工事・配達車両が駐停車する場所として利用されている。
仮に車庫スペースを確保できたとしても、工事・配達車両の駐停車スペースをどうするかという問題が残る。

前方の私道に大型車両が停まっていたら、隣家の方は自家用車の出入りで困ってしまうだろう。

隣家の車が出られない

まとめ

最後に挙げた判例(「ポール設置。その後和解」)では、申請者さんは横浜地裁に提訴したり、警察との和解をしたりと、ずいぶんと骨を折った様子がうかがえる。
私道を車庫として使うには、リスクやトラブルや手間が多すぎるようだ。

駐車場がない分、この物件は安く購入できた。
しかし競合物件との競争になった場合、駐車場料金を家賃から差し引かないといけないという短所もある。

「不動産に掘り出し物はない」という格言は、あながち間違いではないようだ。

2016/09/16追記

読みやすいよう一部修正。その後の経過として、以下の記事を後日追加した。

(参考)「私道駐車は確実にトラブルが起きるからやめたほうがいい」

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