更新料を受け取っていると裁判所から返還命令を受けるかも

不動産経営

verdict

部屋を借りている人にとっては悩みの種の「更新料」。
部屋を貸している人にとっては「臨時収入」や「ボーナス」みたいなものでしょうか。

2年毎に家賃1か月分ものお金を請求され、納得がいかない入居者さんも多いのではないでしょうか。
私は家を貸している立場でもあるので、借主・貸主両方の気持ちが理解できますが、「更新料」はいずれなくなる制度だろうと考えています。

更新料の根拠は?

部屋を借りる際の仲介手数料は、宅地建物取引業法で「最大で家賃1か月分まで(承諾を得ている場合)」と規定されています。
しかし「更新料」に関しては明確な根拠が存在していません。あえて言うなら「慣習」でしかありません。地域によって差がある慣習には法的強制力はありません。
※出展:「家賃は払います!更新料は払いません!!敷金は返してください!!!」(鈴木 和幸 著)

契約書に「更新料は家賃〇か月分」と書いてある場合は?

「更新料は家賃〇か月分」と記載された契約書に署名捺印してしまったとしても「法定更新」という制度があります。

「法定更新」とは、更新前と同じ条件で住むことを前提に、更新料を支払わずに契約を更新することです。
借地借家法第26条に記載があります。

建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

※「定期借家契約」では「法定更新」は使えません。

「更新料は無効」とした判例

(2009年京都地裁判決)
◆賃貸更新料は「無効」判決
賃貸マンション契約更新の際に「更新料」の支払いを求める契約情報は、消費者契約法に反するとして、京都府長岡京市の20歳代の男性会社員が、支払済の更新料など466,000円の返還を家主に求めた訴訟の判決が(7月)23日、京都地裁であった。
辻本裁判長は「入居者の利益を一方的に害する契約条項」と認定、同法に基づいて、更新料の契約条項を向こうとする初の判断を示し、家主に請求金額の支払いを命じた。
判決によると、男性は2006年4月、京都市下京区内のマンションに、賃料月58,0000円、2年ごとの契約更新の際に賃料2か月分の更新料を支払う、との内容の契約を結んで入居。08年の更新時に116,000円を支払ったが、同5月末に退去した。
辻本裁判長は、「家主が主張する更新料の性質に合理的理由は認められず、趣旨も不明瞭」などと述べ、契約条項は無効と判断した。

※出展:2009年7月24日 読売新聞
原告は見事に裁判で勝利を勝ち取っています。
それにしても「更新料2か月分」というのは、いくらなんでも横暴です。

(2009年 大阪高裁判決)
◆賃貸更新料、高裁が無効判決
賃貸マンションの契約更新時に入居者から「更新料」を徴収する契約情報は消費者契約法に照らして無効だとして、京都市の男性会社員が家主に支払い済の更新料など約55万円の返還を求めた訴訟の控訴審判決が(8月)27日、大阪高裁であった。
成田裁判長は、請求を退けた一審京都地裁判決を変更し、約45万円の支払いを家主に命じる逆転判決を言い渡した。
男性は00年8月、京都市左京区のマンションにつき45,000円の家賃で入居。1年ごとの契約更新の際、家賃約2か月分にあたる10万円の更新料を支払う内容の契約を家主と交わし、06年11月に退去するまで5回分の更新料(50万円)を支払った。

※出展:2009年8月28日 朝日新聞
こちらも京都の原告です。1年ごとに2か月分以上の更新料を請求されたら、どんな穏やかな入居者さんでも激怒するでしょう。

「更新料」をあてにしている大家さんはいずれ淘汰されていく

私は家を貸す側の人間でもあるので、本来であれば入居者さんに「法定更新」をお勧めすべき立場ではありません。
しかし更新料がネックとなって入居者さんに退去されてしまうよりは、「法定更新」であっても長く住んでいただけた方がマシです。

私自身部屋を借りていた時、「更新料かー。払いたくないなー」と感じた経験もあります。
そのため私の所有物件では「更新料」はいただいていませんが、2年ごとに管理会社さんに賃貸契約書類を作成してもらっているため、その書類作成手数料だけは入居者さんに負担していただいています。

いずれは書類作成手数料も家主が負担しないといけなくなると思います。ただしそうなった場合には、毎月の家賃に手数料を上乗せすることになるでしょう。

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