あるところに、「ツケ」で無銭飲食を繰り返している輩がいました。
(輩)「大将-!悪いけど、ツケといて!」
飲み屋の大将も最初のうちは、
(大将)「しょうがねえなぁ。次、来た時は払ってくれよな。」
と気前よくツケておきました。しかし、輩はツケを繰り返すばかりで、いつになっても支払う様子がありません。
性懲りもなく店に現れては、
(輩)「大将!今日もツケといて!」
と抜かします。
(大将)「旦那、ツケは今日が最後だ。次からは現金しか受け取らないからな!」
と、大将は返しました。
それ以来、輩はぱったり顔を見せなくなりました。
輩が「ツケ」を始めてから7年が経過しました。
いいかげん堪忍袋の緒が切れた大将は、輩の自宅を訪問して支払いを請求しました。
(大将)「旦那、いい加減にもう払えよな(怒」
すると輩は、
(輩)「え?もう時効でしょ?時効が来たら払わなくていいって、法律で決まってるよ!」
などとほざきました。
このケースでは大将は泣き寝入りするしかないのでしょうか?
※出展:合格しようぜ! 宅建士 2016 音声付きテキスト&問題集 下巻[権利関係等]。以下、出展元の記載がない場合は同著からの引用。
答えは「NO」です。
債権の時効が成立する期間は原則10年です。
輩は大将に飲み代を支払わなければいけません。
大将が支払いを催促する時期があと3年遅れていたら、時効が成立していたところでした。
1)消滅時効の期間、起算点
原則
債権は、10年間行使しない時は、消滅する。
例外
- マンションの管理費などは5年で消滅する。
- 地上権や永小作権などの財産権は、20年間行使しない時は消滅する。
- 所有権は消滅しない。
起算点の考え方
- 返済日(支払期限)が決まっている場合は、支払日が到来した時点。
- 返済日(支払期限)の定めがない場合は、債権が成立した時点。
上記起算点から考えて、10年経過した場合、原則として時効を迎えます。
2)援用・放棄について
援用
援用とは、債務者が時効の完成・成立を主張することです。
当事者が時効を援用しなければ、時効は有効になりません。
放棄
債務者が「私は時効を主張しません。」と借用書に書いたとしても、時効は有効です。時効の利益は放棄できません。
ただし、時効完成後に時効利益の放棄、つまり借金の返済をすることは可能です。
効力
時効が完成すると、その効力は起算日にさかのぼります。
3)時効の中断について
以下の行為を債権者が行った場合、時効は中断され経過期間はゼロに戻ります。
請求グループ
- 裁判上の請求
- 支払い督促の申し立て
- 和解および朝廷の申し立て
ただし、裁判の訴えが却下された場合や、本人が訴えを取り下げた場合は、時効は中断されません。
裁判グループ
- 差押え
- 仮差押え
- 仮処分
裁判所を通さない中断事由
催告
債権者が内容証明郵便などで支払いを請求することを、催告と言います。
催告後、6か月以内に裁判上の請求をした場合、催告時点に戻って時効は中断となります。
承認
債務者が債務を負っていることを認めることを、承認と言います。
- 契約書の一部書き換え。
- 一部弁済。
- 弁済の猶予を求める。
これらの行為は、承認にあたります。
まとめ
滞納された家賃も、時効で消滅してしまいます。
滞納されていても家賃は売上としてカウントされてしまうため、手元にお金がないのに税金を支払わないといけないという状況が発生してしまいます。
滞納には迅速な対応が求められます。
参考
- 「家賃・地代などの賃料請求権は,5年で時効により消滅してしまいます。」|不動産問題ネット相談室
- 「5年程前に交際相手と住んでいたアパートを、退去した際、滞納してたようで、督促の電話がありました。」|弁護士ドットコム
- 「5年間逃げ切ってしまえば、債権者の請求権は消滅する。」|誰でもわかる不動産入門