不動産会社の役員や政令で定める使用人に「欠格事由」に該当する人がいた場合、宅建業の免許を受けることができません。
「政令で定める使用人」とは、代表取締役の代わりに本店や支店で働く社長代理のような人のことです。通常の従業員は含まれません。
[A] 能力が信用がない場合
- 成年被後見人
- 被保佐人
- 破産者で復権を得ない者
- 未成年者の一部
※出展:合格しようぜ! 宅建士 2016 音声付きテキスト&問題集 上巻[宅建業法・法令上の制限]。以下、出展元の記載がない場合は同著からの引用。
1. 成年被後見人
民法では以下のように、定義されています。
成年被後見人 … 精神上の障害により、事理を弁識する能力を『欠く』常況にある者
※出展:くまもと司法書士事務所
具体的には、「痴呆」や「知的障害」「精神障害」などの重度の精神障害を持つ人のことです。
2. 被保佐人
被保佐人 … 精神上の障害により、事理を弁識する能力が『著しく不十分』である者
※出展:くまもと司法書士事務所
「成年被後見人」よりは症状が軽いものの、多くの場合は常識のある他の誰かの助けが必要な人のことです。
3. 破産者で復権を得ない者
自己破産の手続きが終わり、資格制限が解除されることを「復権」と言います。
手続きから免責許可が出るまでの期間は3か月~6か月というケースが多いです。
4. 未成年者の一部
- 法定代理人(親など)から営業の許可を受けている未成年者
- 婚姻をした未成年者(成年擬制)
の2者に関しては「営業に関し成年者と同一の行為能力を有している」とみなされ、成年者と同格に扱われます。
この2者に該当しない場合、業務を行うには法定代理人が必要になります。この法定代理人が欠格事由に該当する場合は、未成年者も欠格事由となります。
[B] 悪質3種で免許を取り消されている場合
- 不正の手段で免許を受けた
- 業務停止処分に該当する行為をし、情状が特に重い
- 業務停止処分に違反
上記理由で免許を取り消された場合、取り消しの日から5年以内は欠格事由となり、その間は宅建業免許の取得ができません。
個人でも会社でも同様です。
悪質3種で免許取り消しとなった会社の役員で、聴聞公示の60日前までに役員だった場合も、5年間の欠格事由となります。
聴聞とは、宅建業者に対して監督処分が実施される前に、国土交通大臣や都道府県知事が実施する手続きのことです。
[C] 懲役刑や罰金刑に処せられている場合
- 宅建業法に違反による罰金
- 刑法の傷害罪・現場助勢罪・暴行罪・凶器準備集合及び結集罪・脅迫罪・背任罪による罰金
- 暴力行為等処罰に関する法律違反による罰金
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律違反による罰金
- 上記以外による禁固・懲役刑
科料、拘留の場合は欠格事由にはなりません。
道路交通法違反、過失傷害罪、私文書偽造による罰金も欠格事由の対象ではありません。
[D] 暴力団員または離脱者の場合
- 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 暴力団員等が事業活動を支配している場合
これらの場合も欠格事由です。
[E] その他
- 免許申請前5年以内に宅建業に関し不正または著しく不当な行為をした者
- 宅建業に関し不正または著しく不誠実な行為をするおそれが明らかな者
- そもそも宅建取引士の数が足りない場合(従業員の1/5以上)
まとめ:駐車違反等なら欠格事由にはならない
道路交通法違反による罰金は欠格事由の対象にならない、という点が印象に残りました。道路交通法違反もしないのが一番ですが、うっかりとか悪意のない場合もありますし。車も運転できなくなってしまったら、不動産屋という仕事自体成り立たないでしょう。