以前、「用途地域と用途制限」という記事で12種類の用途地域について触れましたが、「特別街区」のように異なる基準が適用される地域もいくつかあります。この記事では、用途地域以外の地域地区について説明します。
特別用途地区(都会型)とは?
渋谷の表参道や、上野公園周辺などは「文教地区」に指定されています。
これらの文教地区は本来商業地域ですが、良好な環境を守るためにホテルや風俗店などの建設が制限されています。
特別用途地区(都会型)には以下のようなものがあります。
特別工業地区
公害防止または地場産業の保護育成の観点から、用途制限を強化したり緩和したりしている地域です。
※出展:合格しようぜ! 宅建士 2016 音声付きテキスト&問題集 上巻[宅建業法・法令上の制限]。以下、出展元の記載がない場合は同著からの引用。
文教地区
学校などの教育施設周辺の環境を保護するために指定されています。
甲子園球場地区
兵庫県西宮市にあります。球場周辺にはギャンブル関係や性風俗関係の出店はできません。
観光関連産業保護育成地区
第一種低層住居専用地域で本来はお店の出店ができない地域ですが、地域の伝統に即したお店であれば出店が可能です。(例:そば屋、民芸品店等)
高度住居誘導地区(都会型)とは?
第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域で、容積率が400%または500%であれば、斜線制限や日影規制などが適用されない地域です。最大容積率は600%です。
東京都港区芝浦などがこの地域にあたります。
高度地区とは?
建築物の高さの最高限度や最低限度が決められている地域です。
高度利用地区、特定街区、特定容積率適用地区とは?
こちらの記事で説明しています。
景観地区(都会型)とは?
市街地の良好な景観を保つための地域です。
2004年の「景観法」制定に伴い、それまでの「美観地区」が廃止されました。
東京都の国立市がこの地区に当たります。
風致地区(都会型)とは?
景観地区と似た地域で、都市の景観を保つための地区です。
「風致」という言葉はあまり耳慣れない言葉ですが、国語辞典によれば「都会人の目を楽しませるものとしての森林、河川など、自然環境の整合の美」とのことです。
「風」という言葉が入っているので「風通しを良くするための場所かな?」と思ってしまいましたが、単に「良い景色(自然)」という意味合いのようです。
東京の明治神宮がこの地区に当たります。
風致地区内では、建築物の建築、宅地造成、森林伐採等の行為は都道府県知事の許可を受ける必要があります。
防火地域・準防火地域(都会型)とは?
燃えない建物を建てる必要がある地区です。
東京23区内では、容積率400%以上の場所は防火地域に指定されています。
防火地域では、3階建以上を建築する際には耐火建築物にしなければいけません。
特定用途制限地域(地方型)とは?
平成12年の準都市計画区域制度で設定されました。
用途地域が定められていない場所で、市街化調整区域を除く場所に関して、特定の建物の建築が制限されます。
地方公共団体の条例によって定められます。
その他
- 都市再生特別地区
- 特定防災街区整備地区
- 駐車場整備地区
- 臨港地区
- 歴史的風土特別保存地区
- 第一種歴史的風土保存地区
- 第二種歴史的風土保存地区
- 緑地保全地域
- 特別緑地保全地域
- 緑化地域
- 流通業務地区
- 生産緑地地区
- 伝統的建造物群保存地区
- 航空機騒音障害防止地区
- 航空機騒音障害防止特別地区
それぞれ、個別の効率によって制定されています。
まとめ
購入しようとしている中古住宅が上記の「地域地区」に該当している場合は、
- 再建築が可能かどうか
- 増改築が可能かどうか
- 隣地に高層マンションの建築計画がないか
など、「地域地区」特有の制限についても確認が必要です。
住人にとって住みやすい場所であれば、思わぬ掘り出し物の可能性もあります。