※出典:WEDGE2016年9月号
経済雑誌「WEDGE」2016年9月号に、副業に関する特集が掲載されていた。
ひとことで言うと、副業に寛容な方向へと社会は動いている、という話だ。
副業実践者にとっては参考になる内容と思われる。
以下、一部引用する。
副業が本業にもたらすメリット
「新しい事業を生み出すには(中略)過去の成功体験だけでなく別の価値観が必要。各企業はこれまで社内異動でそれを得ようとしてきたが、限界がきた」
(ロート広報部)
「自分で商売をやってみることで経営者の視点が身に付く」
(エンファクトリー社長)
「社員にはサイボウズがなくても生きていけるよう自立することを求めている」
(サイボウズ人事部)
「社員の面倒を会社が一生みられるわけではない」
(ヤフー人事部)
「副業を促進することで、社員は外部の知恵や人脈を得る。副業で自らがやりたいことをやるために本業の時間意識の向上にもつながる」
(リクナビNEXT編集長)
副業が社員にもたらす効果として、
- 新事業に関する発想力
- 経営者視点
- 時間意識の向上
- 社外とのつながり
- ぶら下がり社員の撲滅
などが雑誌内では取り上げられている。
社員の副業に寛容な会社例
本書では、社員の副業に寛容な会社として次のような会社を取材している。
ロート製薬 | 「社外チャレンジワーク制度」: 入社3年目以降の国内正社員全員が対象。競業他社を利するものでなければ、人事部への申請後、許可される。 |
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エンファクトリー | 「専業禁止」: 強制ではないが社員に副業を持つことを勧めている。1年に1度、自分がやっている副業について全社員の前で発表する。 |
サイボウズ | 原則許可: 申請不要。勤務時間と出社日数で区分した9つの働き方を社員は選べる。50歳を過ぎると給与は下がる傾向にある。 |
リクルートマーケティングパートナーズ | 副業OK: 創業以来、副業を認めている。会社から2時間以内の場所であれば、どこでもリモートワークが可能。 |
ヤフージャパン | 副業OK: 副業を持つ社員の数は数百人(全社員数は約6千人)。 |
※雑誌掲載順。
副業実践者の事例
雑誌の中では、
- ブログ運営
- 会社経営(コンサルティング、企画等)
- ネットオークション
などで本業と同等以上の売上をあげている人々も取り上げられていた。
副業で本当に労働生産性は上がるのか?
「労働生産性」とは、「より少ない労働時間でより多くのお金を稼げるかどうか」という指標のことだ。
生みだされた生産額を投下した労働の量で割った値、すなわち労働者1人1時間あたりの生産額で示される。
※出典:コトバンク。
税金の源であるGDPを増やしたい政府にとっても、利益を上げたい企業にとっても、労働生産性は高ければ高いほどよい。
しかし、副業で労働生産性が高まるかというと、多くの疑問が残る。
副業といっても、起業や会社経営に踏み切れる人はほんの一部だ。
実際は、「時間切り売り型」のパートやアルバイトをおこなう人の方が圧倒的に多い。
「時間切り売り型」の副業では、本業より時給が低くなる可能性が高い。
また「起業型」の副業でも、本業を上回るほどの収入に到達するには数年はかかる。
中には、儲けを度外視してやりたいこと・楽しいことを追及する「道楽型」の副業に取り組む人もいるだろう。
副業はあくまでも労働者の「余暇活動」だ。
「労働生産性を向上させるためにも副業に取り組まなければ!」などという気持ちで副業に取り組んだとしても、決して長続きはしない。成果にもつながらない。
副業を巡る社員と会社の化かし合い
いくらきれいごとで外見を塗り固めてみても、労働者と経営者の利益が一致することはほとんどない。
労働者は、より少ない負担でより多くの賃金をもらえる職場を常に探している。
経営者は、より少ない賃金でより多くの売上を生み出してくれる労働力を常に探している。
経営者の本音は、「副業を認めてやるから、もっと会社に役立つ人材になれよ。」というものだ。
まとめ:副業がプロボノの二の舞にならないよう祈る
東日本大震災の後、「プロボノ」という言葉がよく聞かれた。
「プロボノ」とは、弁護士・会計士・広報・デザイナー・エンジニアなどの専門技能を持つ人々が、無償でNPOや社団法人の活動に参加することを指す。
理念や活動自体は尊いものだが、実際のところは賃金を支払いたくないNPOの経営者にタダでいいように使われて終わるケースも少なくなかった。
プロボノが流行った時と同様に、副業が経営者にとって都合のいい道具にならないよう、労働者は経営者の思惑に注意する必要がある。
副業はあくまでも労働者本人のためのものだ。