先日、「クレームを苦に飛び降りた鉄道員のニュースでコールセンターの悪夢を思い出した」という記事を書いた。
今回の記事では、クレーム問題を解決するために私達一人ひとりにできることを考えてみた。
「客と店員は対等」が世界標準
海外に行くと、日本基準で考えれば恐ろしくやる気のない店員を見かけることが多い。
日本だったら10秒で終わるところを、店員同士でおしゃべりしていて一向に進まないレジ。
開店時間を過ぎてもシャッターが下りたままの店。
閉店時間の数十分前には店の明かりを消し始める店主。
日曜日にはほぼ全ての店が休業する国…。
これらは消費者サービスという点から考えればデメリットだが、裏返せば「働きやすい職場」「店員に寛容な店」と考えることもできる。
他人に寛容になることを求めるのであれば、まずは自分自身が他人に対して寛容になる必要がある。
消費社会の進展で失われたもの
消費社会が進展したおかげで私達の生活は便利になった。
しかし、得るものがあれば失うものもある。
昭和時代の商店街では、人々は消費者であると同時に生産者でもあった。
しかし1983年以降自営業者の数は減少を続け、2010年には全就業者に占める自営業者の割合は12.3%まで低下した。
一方、雇用者(いわゆるサラリーマン)の数は右肩上がりに増加した。
※出典:総務省、内閣府
経済成長の中で自営業という働き方は、非効率で時代遅れなものとして扱われるようになった。
多くの人が現場から離れ、オフィスで働くようになり、消費活動と生産活動は切り離されていった。
「お客様は神様です」という言葉が生まれたのは1960年。
生産者が消費者に過剰なサービスを提供するようになり、消費者はそれを当然と考えるようになった。
クレーマー問題は、このような社会の変化を背景として順調に育っていった。
クレーム問題の解決策は私達一人ひとりが生産者の視点を持つこと
コールセンターや鉄道会社などで、モンスターのようなお客さんに日夜対応している人々の努力には頭が下がる。
しかし、どうにもならなくなったときのためにも、逃げ道を用意しておいてもいいのではないだろうか?
その逃げ道とは、「出て行け!お前は客じゃない!」と言えるラインを定めることかもしれない。または、しがらみの多い職場からいつでも脱出できるよう、自ら稼ぐ力を身に付けることかもしれない。
自ら稼ぐことを意識すれば、消費者目線だけではなく生産者側の視点が自然と身に付く。
そうすれば、私達は他人(生産者)に対してもっと寛容に接することができるようになる。
昔ながらの商店街では、お互い友達のように話している店員さんとお客さんの姿を見かけることができる。
お客さんとの距離が近いお店では、人格を否定するような極端なクレーマーは生まれにくいものだ。
自営業者には、お客さんを選ぶ自由がある。仕事をコントロールする権限もある。
クレーマー対応で心を病むくらいであれば、そのお客さんとの関係は切ってしまったほうがよっぽどいい。
もちろん、そのようなドライな対応を取っても生活が苦しくならないために、稼ぐ力が必要となる。