お金を増やす方法として宝くじを選んだ人の末路は本当に悲惨?(前編)

お金を増やす方法

jackpot

「悪銭身に付かず」ということわざがあります。
ギャンブルなどで手に入った「あぶく銭」は、ろくなことに使われず、あとに残らないという意味です。
他にも、「宝くじに当たった人は、悲惨な人生を送る」という説もあります。

これらの話は、本当なのでしょうか?

軽くググってみる

まず、誰もがやりそうなことをしてみます。
「宝くじ」「当選」「人生」というキーワードでGoogle検索してみると、

商売に手を出して失敗したり、自己破産してしまったり、事件に巻き込まれたり、飲み食いで使い切ってしまったり。
予想通りの話が出てきます。

しかしこれでは、
「宝くじやギャンブルに当たっても、いいことはありませんよ」
という無難な説教で終わってしまいます。

それではちょっと面白くないので、もう少し調べてみました。

ベルギーの宝くじ当選者調査

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※出展:KATHOLIEKE UNIVERSITEIT LEUVEN

ルーベン・カトリック大学・社会科学部のアレックス・マルクスさんとハンス・ペータースさんの共同調査に、「宝くじ当選者の調査結果から見る、ベーシック・インカムと労働の関係性」というものがあります。
※原題:”AN UNCONDITIONAL BASIC INCOME AND LABOR SUPPLY RESULTS FROM A SURVEY OF LOTTERY WINNERS” Axel Marx , Hans Peeters, 2004

「一生当たり」(Win for Life)とは?

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※出展:Loterie Nationale

ベルギーの宝くじには「一生当たり」(Win for Life)という制度があり、この宝くじに当たると、死ぬまで毎月500~3000ユーロ(約64,000円~384,000円)をもらえます。
※2016年1月時点の為替、1ユーロ=128円で換算

仮に、30歳で毎月2000ユーロの「一生当たり」に当選し、80歳まで生きたとすると、1億5360万円に当たったのと同じことになります。
※256,000円×12か月×50年=1億5360万円

90歳まで生きたら、1億8432万円です。
総額としては、日本の宝くじの当選金と似たような額です。

月々25万円程度と聞くと、
「そんなチマチマもらうより、一括でもらった方がいいわ!」
と言う人も多いかもしれません。
確かに、インフレ率や複利効果を考えると一括でもらった方がお得かもしれません。
しかし急に大金が入って来ると、金銭価格が狂って短期間で使い切ってしまう可能性もあります。

「一生当たり」と「ベーシック・インカム」の共通点

この「一生当たり」制度そのものは、「ベーシック・インカム」に近いものと言えます。
※「ベーシック・インカム」とは、社会保障給付の一種。一定の収入水準を下回る人への継続的な給付金。

「ベーシック・インカム」導入そのものに関しては、

  • 「働く意欲がなくなってしまう。」
  • 「怠け者に税金を渡すのか!」
  • 「財源が足りなくなる!!」

など否定的な意見も数多く出ており、本格的に導入されている国は現在のところありません。

前述のベルギーの宝くじ調査は、この「ベーシック・インカム」の導入判断材料として活用されることを目的としていました。

「一生当たり」で仕事を辞めた人は4.7%

以下、ベルギーの宝くじ調査から引用します。

「一生当たり」に当たった後、仕事を辞めたり、労働時間を減らしたり、独立・起業をするような人はほとんどいなかった。「一生当たり」と似た制度であるベーシック・インカムを導入しても、極端な影響はないだろう。
(The results point to no extreme consequences of introducing a BI akin to W4L, with very few changes regarding quitting work, diminishing working time or becoming self-employed.)

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この表は、「一生当たり」に当たった人が、その後仕事を辞めたかどうかを調査したものです。

サンプル数は合計107人。
内訳は、独身者が14人、共働きの夫婦が41組(82人)、どちらかだけが働いている夫婦が11組です。

独身者14名のうち、当選後に仕事を辞めた人は1人。
※「Singles」行で、「Working at the time of survey」列の「No」に当てはまる人

共働きの夫婦41組のうち、当選後に仕事を辞めた人は4人。
※「Couples, 2 partners working」行で、「Working at the time of survey」列の「No」に当てはまる人。このうち一人だけが「一生当たり」を理由に仕事を辞めたとのこと。

どちらか一方だけ働いている夫婦11組のうち、当選後に仕事を辞めた人は0人。
※「Couples, 1 partner working」行で、「Working at the time of survey」列の「No」に当てはまる人

このベルギーの宝くじ調査では他にも、

  • 「一生当たり」に当たった人が、そのあと商売を始めたケースはゼロ
  • 「一生当たり」に当たった人が、そのあと労働時間を減らしたケースは4.7%

という調査結果も示されています。

仕事を辞めたり商売を始めたからといって、人生が悲惨になるわけではもちろんありません。
しかし、退職も独立も大きな環境の変化であることは確かです。
大きな環境の変化がなければ、自己破産や事件の被害者になるような可能性は極めて低いと言っていいでしょう。

このベルギーの宝くじ調査から言えることは、「宝くじに当たって経済的に一生安泰になったとしても、多くの人は今まで通りの生活を続ける傾向がある」ということです。

「一生当たり」は、日本の宝くじの参考になるか?

ベルギーの「一生当たり」は、計画的かつ半永久的に受け取れる当選金です。
その意味では、日本の「宝くじ」とは性格が異なります。

このベルギーの調査結果をもとに、「宝くじに当たった人は悲惨な人生を送る」という伝説を否定するには、少し弱いかもしれません。

次回の後編では、安藤祐介さんの「宝くじが当たったら」という小説を参考に、日本の宝くじ当選者の当選後について考えます。

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