隣家で発生した火事の影響で自分の家が焼けてしまったとしても、隣家に重大な過失がない限りは賠償を請求することはできません。
これは「失火責任法」という法律で定められています。
民法第七百九条(不法行為による損害賠償) ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス 但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
※出展:日本法令索引
それでは、「重大な過失」とはどんなことを言うのでしょうか?
「重大な過失」=「重過失」とは?
重過失が肯定された事例としては、次のようなものがあります。
- 火気厳禁の場所で吸いかけの煙草を灰皿に放置し、そこへ可燃性の製品が落下し火災になった。
- 火鉢の火気を確認せず、アルコールを火鉢に注ぎ火災になった。
- 電熱器を布団に入れこたつとして使用し、火災が発生。
- 藁が散乱している倉庫内で煙草を吸い、吸い殻を捨てたため火災が発生。
- 異常乾燥で火災警報発令中に、屋根の杉皮に吸い殻を捨てたために火災が発生。
- 電力会社が配線が垂れ下がっているのを放置したため、強風で家屋の火災が発生。
- 石炭ストーブの残火のある灰をダンボール箱に投棄したため発生。
- 電気こんろを点火したまま就寝したところ、ベットからずり落ちた毛布が電気こんろにたれさがり、毛布に引火。
- 台所のガスこんろにてんぷら油の入った鍋をかけ、中火のまま台所を離れたため火災が発生。
- 火災注意報発令下、多量のかんな屑が集積放置されている庭において、焚火をした。
- 寝タバコを漫然と続けて火災を起こした。
- 点火中の石油ストーブから75cm離れた場所に、蓋がされていないガソリンのビンを置き、ビンが倒れて火災が発生。
- 石油ストーブに給油する際、火を消さずに給油したため、こぼれた石油に着火して火災が発生。
※出展:河原崎法律事務所ホーム
どれもこれも、
「なんでそんなことしたの!?頭悪いの?」
というようなものばかりではあります。
実際の現場としては、「うっかりしていた」という程度の認識だったのかもしれません。「うっかり」と言うにははあまりにも甚大な被害です。
重過失でも保険の支払いは受けられる?
貸家の場合、
- 貸主が入る保険(建物)
- 借主が入る保険(家財)
という二種類の保険を契約するのが普通です。
隣家からの延焼が発生したとしても、この二つの保険で損害はカバーされます。
隣家の火事の原因が隣家の重過失だった場合でも、保険の支払いは受けられます。
※この場合、保険会社は保険金を支払った後、隣家に損害賠償請求を行います。
問題は、「保険契約者の重過失」が火災の原因だった場合です。
まとめ:貸主は重過失に注意しないと破産することになる
- アパートの一室に住んで、他の部屋を貸している
- 賃貸併用住宅に住んでいる
という大家さんは、重過失には常人の何倍も注意を払う必要があります。
借主(入居者)さんの重過失が原因であれば、貸主は貸主側の保険で損害を補てんできます。しかし、貸主側の重過失が原因だった場合、
- 保険会社から保険の支払いを受けられない
- 借主に賠償金を支払わなければならない
という二重苦に見舞われることになります。
このような事態を避けるには、「個人賠償責任保険」に加入するという方法もあります。
不動産投資で豊かになるはずが、火事の賠償金の支払いで破産してしまったら、元も子もありません。
不動産投資家の皆さん、重過失による火事には充分注意しましょう。