街を歩いていると、上の方が斜めに切り取られたような形をしているマンションを見かけます。
子どもの頃は「こういうデザインなのか?変わった趣味の人がいるもんだ。」くらいに考えていましたが、大人になってから「日照権」という言葉を知り、マンションが斜めに作られている理由を理解しました。
中古戸建に投資している限りは特に気にする必要はないですが、新築でアパートや家を建てるのであれば「斜線制限」を気にする必要があります。
道路斜線制限とは?
道路には通行の場所としての意味だけでなく、近隣の環境保護や衛生上の観点から日照・通風を確保するための空間としての意味、そして延焼防止のための空間としての意味もあります。
道路周辺の空間をできるだけ広くとるために行われる建築物の高さ制限が道路斜線制限と呼ばれる制限なのです。
※出典:「建築基準法の基本と仕組みがよ~くわかる本」(不動産・建築行政法規研究会 著)
「道路斜線制限」では、風の通り道や日照の確保などの面から、建物の高さを制限しています。道路の反対側の境界線からの距離に応じて、建物の高さが制限されます。
道路幅×1.25の地域
以下の用途地域に当てはまる場合、道路幅×1.25が道路に面している部分の高さの上限となります。
- 第1種低層住居専用地域
- 第2種低層住居専用地域
- 第1種中高層住居専用地域
- 第2種中高層住居専用地域
- 第1種住居地域
- 第2種住居地域
- 準住居地域
つまり4メートルの幅員の道路に面している場合、道路に面している部分の建物の高さは5メートルが限度となります。
5メートルと言えば、2階建ての建物でも引っ掛かってしまいます。戸建を中心として投資を行っている投資家も無関係ではいられません。
道路幅×1.5の地域
以下の用途地域に当てはまる場合、道路幅×1.5が道路に面している部分の高さの上限となります。
ただし、「中高層住居専用地域」の場合は容積率が400%の地域、「住居地域」の場合は特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議をへて指定する区域内に限られます。
- 第1種中高層住居専用地域
- 第2種中高層住居専用地域
- 第1種住居地域
- 第2種住居地域
- 準住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
4メートル道路に面している場合、道路に面している部分の高さの上限は6メートルとなります。
その他、容積率の限度に応じて制限が変わりますが、煩雑になるため省略します。
隣地斜線制限とは?
隣の敷地にやたらと高い建築物が建築されたら、ほとんどの人は嫌がるでしょう。
これまで得られていた日照や通風が阻害されるのですから当然です。
このような障害が生じないように、建築基準法は隣地との関係でも斜線制限を定めています。これを隣地斜線制限と言います。
※出典:「建築基準法の基本と仕組みがよ~くわかる本」(不動産・建築行政法規研究会 著)
建築物の高さが20メートルを超える場合は、「隣地斜線制限」を考えなければいけません。
※住居系以外の用途地域では31メートルを超える場合。
戸建や木造アパートであれば、高さが20メートルを超えることはほとんどありません。あまり気にする必要はないでしょう。
北側斜線制限とは?
原則として第1種低層住居専用地域および第2種低層住居専用地域だけに適用される斜線制限です。
日照の点で不利になりがちな北側の隣地についても、できるだけ十分な日照を得られるようにしようということなのです。
※出典:「建築基準法の基本と仕組みがよ~くわかる本」(不動産・建築行政法規研究会 著)
「北側斜線制限」では、道路境界線または隣地境界線までの真北方向の水平距離×1.25+5メートルが建物の高さの限界となります。
例えば、北側の隣地境界線から1メートル離れて家を建てた場合、6.25メートル以上の高さには建物が建てられません。戸建や木造アパートにとって、6.25メートルという高さは無関係とは言えません。
なお、第1種・第2種中高層住宅専用地域では、隣地北境界線からの距離×1.25+10メートルが建物の高さの限界となります。
まとめ:日本の法律は住人に優しい
「役所や法律は冷たいもの」という認識がありました。しかし、建築基準法を改めて勉強してみると、住人の生活にきめ細かく配慮して何度も法改正が繰り返されていることが分かります。
覚える側としては面倒なことこの上ありません。いつか不動産投資に役立つだろうと思い勉強を続けます。