不動産投資をしようとしている夫を論破すべきではない理由と3つの解決策

不動産経営

ronpa
※出展:ボケて

教えてgooの不動産カテゴリを見ていたところ、次のような投稿を見付けた。

不動産投資の営業を論破したいです

結婚して2年の夫がおりますが、結婚前に不動産投資でマンションを二軒購入していたようで、数千万のローンを抱えています。
(結婚するときに黙っていたのも許せませんが…)

家賃収入でプラマイゼロで資産形成できるとかなんとか言われて購入したようですが、実際は毎月3万くらいのマイナスで、勝手に家賃も下げられるし、固定資産税もあるし、はっきり言ってローンを組んでまで持っている意味がわかりません。

(中略)

ところが夫は、不動産投資の営業にもう一軒購入しないか持ちかけられて、乗り気のようです。
私としてはただでさえローンが生活を圧迫している要因なのに、三軒目なんて言語道断です。
文句を言うためにも、営業担当に会うことになったんですが、相手と旦那を論破するためのアドバイスをいただけませんでしょうか。

※出展:教えて!goo

投稿者はどのようにすれば夫を説得できるだろう。

相手を論破しようという時点で既に負けている

ほとんどの場合、意見の異なる相手を正論で言い負かしても、良い結果は得られない。

特に、この投稿者の夫のようなタイプの男性を論破するのは危険だ。
この男性は、妻に苦しい生活を強制しようとしている。自身の非を素直に認められるような、立派な人物でないことは確かだ。

このような男性を論破してしまうと、自分の正しさを証明するためにますます頑固になるか、夫婦間に修復不可能な亀裂が入ってしまう可能性が高い。

「間違いの指摘は罵倒と同じ」

carnegie
※出展:Amazon

1936年の出版以来ベストセラーの座を80年間守り続けている、「人を動かす」という本がある。
本書には、論破という行為の不毛さを訴えている一節がある。

相手の間違いを指摘することはできるが、これは、相手をあからさまに罵倒するのとなんら変わりない。
相手は自分の知能、判断、誇り、自尊心に平手打ちを食らわされているのだ。当然、打ち返してくる。
考えを変えようなどと思うわけがない。

※出展:デール・カーネギー名言集

それでは、投稿者は夫を論破する代わりに何をすればいいのか?

夫が自分から「投資は止める!」と言い出すよう、仕向けるのが得策だ。

前提情報

ではどのようにすれば、夫は「投資は止める!」と言ってくれるだろうか。

説得方法の説明に入る前に、理解しておくべき前提がいくつかある。

前提1)見ている景色が違うことを理解する

妻は、厳しい現在の延長線上に未来を見ている。
いっぽう夫は、楽天的な未来を見ている。

妻は、「二度あることは三度ある、って言うでしょ!次もどうせ赤字になるんだから、これ以上赤字を増やすのはやめなさい!」と考えている。

かたや夫は、「次こそはうまくいく!二回の失敗で俺は学んだんだ!今の苦しい状態を改善するには、挑戦を続けるしかない!」と考えている。一発逆転を狙うギャンブラーのような心理になっている。

前提2)家計が苦しいことを理解させる

夫は、「家計が苦しい」という現実を理解できていないのかもしれない。少なくとも、妻とは現実の認識が異なっている。
なぜなら、「ただでさえローンが生活を圧迫している」状況にもかかわらず、夫はさらなる負担を妻に押し付けようとしているのだから。

家族間の現状認識のズレを修正するためには、お互いの胸の内を打ち明けたり、現状を数値やデータで示したりする必要がある。

話は変わるが、「ニート」が本気で自立を考えるのは、親が苦境を子どもに打ち明けたタイミングであることが多いようだ。

(参考記事)

農業の道を歩み始めた元ニート、インターネットで稼ぐ道を選んだ元ニート…。
親から苦境を打ち明けられた後、ニートたちは程度の差こそあれ、それぞれ現状を打破しようと自ら動き出している。

今回の投稿は夫婦間の問題であり、ニートのような親子関係ではない。
しかし、ニートは「子ども」とは言っても「成人」でもある。親とは異なる個性や価値観を持った一人の人間である。
家族間の価値観のすり合わせという面では、夫婦に通じる部分はあるだろう。

前提3)財産分与および共有財産について理解する

投稿者の夫婦は、財産分与や共有財産の概念を正確に把握していないように見える。

借金を含む「財産」は、

  1. 結婚前 or 結婚後
  2. 借金 or 資産

この二つの要素によって扱いが異なる。簡単に図示すると以下のようになる。
marriage-asset

結婚前の借金=個人責任

結婚前の借金は、あくまでも個人の責任範囲。
その借金の保証人にでもならない限り、配偶者に責任が及ぶことはない。

質問者の女性は、

(結婚するときに黙っていたのも許せませんが…)

と書いているが、感情に流されている場合ではない。

夫は、

  • 結婚前の借金は夫婦生活には関係ない、と考えていた。
  • 家計の足を引っ張るほどの額ではない、と考えていた。
  • 長期的に赤字が黒字に転じる、と見込んでいた。
  • 妻に話しても理解してもらえないだろう、とあきらめていた。

このような主張を持っているのかもしれない。

結婚前の資産=特有財産

個人に帰属する財産を「特有財産」と呼ぶ。特有財産は、離婚の際の財産分与の対象とはならない。

結婚前の借金が結婚相手には無関係なことと同様に、結婚前に取得していた資産もあくまでも個人的なもの。

結婚前の資産を処分するかどうかの決定権を持っているのは、あくまでも夫の方だ。

結婚後の借金=生活に必要な場合は共有

結婚後の財産(資産+借金)は共有となるケースが多い。
※夫婦間の経済力関係によって共有持ち分の割合は異なる。

「生活に必要な借金」と裁判所が認めた場合は、借金についても夫婦で共有することになる。

とはいえ、夫の借金の連帯保証人にならない限りは、妻が借金返済について心配する必要はない。

妻にとって、不動産投資はギャンブル以外の何物でもないだろう。しかし、夫は生活費の足しにしようとして投資を考えているのかもしれない。
皮肉ではあるが、夫の思惑通りに投資が黒字になった場合は、裁判所が「生活に必要な借金」として判断する可能性がある。
「生活に必要な借金」として判断された場合、配偶者も借金の責任の一部を負わなければいけない。しかし、心配する必要はない。黒字が続くのであれば、借金は問題なく返済できるのだから。

それでは、不動産投資が赤字になり、生活がさらに厳しくなってしまった場合はどうだろう?
裁判所が、不動産投資のための借金を「生活に必要な借金」として認める可能性は極めて低い。そうなれば、借金の責任が配偶者に及ぶことはない。

赤字になろうが黒字になろうが、借金の責任について心配する必要がないことは分かった。しかし、家計が圧迫されることへの心配が消えたわけではない。

この点については、
「仮に儲からなかった場合、どうやって家計をやりくりしようか?」
という作戦会議を実施する必要がある。

ただし、「また損したら、アンタどうするつもりなの!」と感情的に夫を問い詰めるべきではない。あくまでも「問題を二人で解決する」という姿勢がなければ、夫の理解や信頼は得られないだろう。

結婚後の資産=共有財産

結婚後に取得した資産は夫婦での共有財産となる。万が一離婚した際には、持ち分の請求ができる。

ただし、共有財産というリターンを得るためには、連帯保証というリスクを配偶者が取らなければいけない場合も。

共有財産を購入するかどうかについては、配偶者にも口を出す権利がある。リターンよりもリスクの方が大きいと考えるのなら、連帯保証を断ればいいだけの話だ。

配偶者の連帯保証が付けられないのであれば、融資を断る銀行も多い。結果的に、夫は不動産投資をあきらめてくれるかもしれない。

前提4)お金に関する価値観の違いを理解する

この夫婦間には、お金に対する価値観に大きな隔たりがあるように感じる。

数千万円のローンは、夫にとっては「返せないことはない」程度の借金なのだろう。
いっぽう妻にとって、数千万円は「天文学的な数字」という認識なのかもしれない。

不動産投資の赤字が生活を圧迫しているといっても、それはあくまでも妻側の意見でしかない。もしかしたら夫は低コスト体質で、「生活に困るような状態ではない」と考えているのかもしれない。極端な話、妻が高コスト体質で、「家賃の安い家になんか住めない!」と考えている可能性もある。

不動産投資においては、「良い借金」(※)という認識の元、資産規模を拡大していく人の方が圧倒的に多い。夫もそのような認識なのかもしれない。
※「良い借金」とは、毎月の借金返済分を差し引いても黒字になるような借金のこと。「悪い借金」は、赤字や損失が増える一方の借金。

お互いがお金に対してどのように考えているのか、夫婦間のすり合わせが必要だろう。

対応策

確実な方法:「止めないなら離婚するよ」

refusing-lady

夫に不動産投資を止めさせる最も確実な方法。
「これ以上不動産投資するなら離婚するよ。」という断固たる決意を、妻が夫に伝えることだ。

ただし、この方法がうまく行くのは、

  • 妻が夫にハッキリと意見を言える。
  • 妻が経済的に自立している。
  • 妻は最悪の場合、離婚してもかまわないと考えている。
  • 夫が妻に惚れている。

上記条件を満たしている夫婦だけだ。

次善策:交渉する

成功率は下がるが、夫が自分から「投資は止める!」と言い出すように仕向けるという方法。

この方法を成功させるためには、

  • お互いが見ている景色の違いを認識する。
  • 家計が苦しいことを理解してもらう。
  • 共有財産の認識を合わせる。
  • お互いのお金の価値観の相違を理解する。
  • 相手に自分の意見を押し付けない。

このような粘り強い話し合いが必要となる。

妻が不動産投資について徹底的に研究して夫を論破する、という方法では、夫婦間に亀裂が入ってしまう可能性が高い。

ホワイトボードやノートに問題点・解決策を書き、話し合いを通じて、問題点を一つずつ二人でじっくり解決していく覚悟が必要だ。

下策:放置

話し合いや交渉を重ねても、夫が自分から「止める!」と言い出さない場合、もはや放置するしかない。

「結婚後の借金」の部分で説明したように、連帯保証人にならない限り借金の責任範囲が配偶者に及ぶことはない。

家計が苦しくなる可能性は残るが、夫に経済的に依存することをやめるチャンスと考えることもできる。

結論:夫が自分で「止める!」と言い出すように仕向けるべし

「止めないなら離婚するよ」という手法は、「妻に頭が上がらない夫」に対しては非常に有効的だ。

このような強権的手法で私が思い浮かべるのは、「ブログ飯」の著者・染谷氏の奥さん「マサオの妻」だ。

●マサオ氏、フルボッコの巻

会社を辞めてからも、家事や育児を積極的にこなし、頻繁に家族を旅行やレジャーに連れ出し、寝る前は私の足をマッサージしてくれるマサオ氏は、本当に良き父・良き夫でした。しかし、こんな善人を、立ち直れないほどボコボコにしたことが一度だけありました。それはブレイクの数か月前、夫婦で散歩をしていた時に突然起こりました。

「いつどこで、どのように、何をして、どんだけ稼ぐのか答えなさい!」
さっきまで和やかに会話をしていた妻の口から、突然5W1Hの質問が飛び出したのですから、夫はキョトンとするしかありません。しかし私は追及の手を緩めませんでした。

「お前の仕事への情熱は、とっさに聞かれて答えられない程度のものなのか!」
「明確に答えられないのは、自分自身や仕事のあり方が解っていない証拠だ!」
「妻にも説明できないものに、人様がお金を落とすわけがないだろう!」

(中略)

これらの質問に対する答えを、ブログの事を何も知らない私にでも解るようにプレゼンするよう命じました。資料作りも含めてリミットは3日間。これで私を納得させられなかったら、ブログから完全に手を引くように言い渡しました。

※出展:「ブログ飯」

「離婚」という言葉は口にしていないものの、ここまでボロクソに言われてしまったら、弱い夫だったら泣いて家を出て行ってしまうかもしれない。
「マサオの妻」さんには、

  • 自分たちは言いたいことを包み隠さずに言える夫婦である。
  • 自分の夫はこれしきではへこたれない。
  • 最悪離婚しても自分はやっていける。

という自信があるのだろう。

夫への信頼と自分への自信があれば、強権的な手法も決して悪くはない。
しかし、より現実的な手法としては「次善策:交渉する」が望ましい。

ところでこの「教えて!goo」の投稿からは、

  1. とにかく物件を売り切ってしまいたいという業者の姿勢。
  2. 値上がりに期待して短期的な損得勘定を忘れている投資家心理。

が見て取れる。
もしかしたら、不動産バブルはピークに近いのかもしれない。

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