家を貸していると、月末までに翌月家賃が振り込まれないことがたまにある。
そんな時、
「キィイイーー!あの入居者、ナメやがって!許さん!叩き出してやるゥー!」
という破壊的な感情で心を満たしてしまう大家さんもいるかもしれない。
「まぁ、うっかり忘れてしまうこともあるよね。人間だもの。」
という寛容な精神を保つことができる大家さんもいるだろう。
当然ながら後者の大家さんの方が、ストレスを減らして大家業を続けていくことができる。
初回入金遅れは全体の1.5%
リクルート住まいカンパニーのレポートによれば、入居して1ヶ月目で滞納した(=最初の入金を忘れた)人の割合は、約1.7%とのこと。
※出典:リクルート住まい研究所「民間賃貸住宅における家賃滞納の定量分析」
なお、このレポートは家賃保証会社団体のデータを利用している。
家賃保証会社を利用した場合、家賃は入居者の銀行口座から自動的に引き落とされる場合が多い。
銀行振り込みと口座引き落としを比べると、入金遅れが発生する確率が高いのは、銀行振り込みの方だ。
口座引き落としの場合、口座を空っぽにしない限り入金遅れは発生しない。
ところが銀行振り込みの場合、入居者が毎月末までに振込み手続きをとらなければ、入金遅れになってしまう。
銀行振り込みの場合の滞納率は、3.5%どころではないだろう。
とはいえ、滞納者の傾向を捉えるにはこのレポートは参考になる。
初月入金遅れのペースで滞納者が増加していくと、半年後には10%もの入居者が滞納者になってしまうが(※)、実際には滞納率は3.5%で頭打ちとなっている。
※1.7%×6ヶ月=10.2%
このグラフから導かれる仮説は、初回は「うっかりして」入金を忘れてしまう人が多いのではないか、というものだ。
実体験
基本的に私は、入居者との間に管理会社を入れている。
ただし、「自主管理でもなんとかなるだろう」と思って、管理業務を委託しなかったケースが過去にあった。
参考:やっちまった!中古戸建投資での失敗ベスト3(つまりワースト3)
このときは年に1・2回、月末までに家賃が振り込まれないことがあった。
また、別のケースでも初回入金分が振り込まれないことがあった。
こんなとき私は、月が空けて1日、入居者に電話で「入金お忘れでないですか?」と連絡することにしている。
すると、「すいませんでした!すぐ入金します!」と謝ってくれることがほとんどだ。実際に翌日には入金が確認できた。
今のところ幸運にも、月単位での滞納者には出会っていない。
家賃保証会社の仕組み
それでもやっぱり滞納や占有が怖いという大家さんもいるだろう。
そんなときは、家賃保証会社を使えばある程度安心できる。
家賃保証会社とは、事情があって連帯保証人を用意できない入居者からサービス料を受け取り、引き換えに保証人となる会社だ。
現在では、管理会社が入金確認・督促業務をアウトソーシングするために、家賃保証会社を利用することが多い。
大家のメリットは、家賃を必ず受け取ることができる点だ。
滞納が発生したら、家賃保証会社が滞納分を入居者の代わりに支払ってくれる。
ただ、家賃保証会社を使えば100%安心というわけでもない。
家賃保証会社の取立てがかなり荒っぽいということで、社会的に問題になったこともある。(※)
大手家賃保証会社が倒産したこともある。
※入金が1日でも遅れると数千円の督促手数料を請求されたり、ドアの鍵を交換されて部屋に入れなくなったり。2009年に国土交通省から「家賃債務保証業務の適正な実施の確保について」という要請が出され、それ以降はある程度改善はされているようだ。
まとめ:締切には厳しく、態度は優しく
大家業をしている限り、滞納トラブルに巻き込まれる可能性は必ずある。
リクルート住まいカンパニーのレポートを信用するなら、30部屋保有していたらそのうち1部屋では確実に滞納が発生するということだ。
「一部屋くらい入金が遅れても当然」という考えを持ち、資金的にも余裕を持つことが大切だ。
もっと大切なことは、入金が遅れた入居者に「大丈夫ですか?」「お忘れでないですか?」と優しく声を掛けてあげることだ。
もちろん締め切りというルールは厳しく適用する必要がある。
さもなければ、入居者が「数日くらい遅れても大丈夫だろう。」というナメ切った態度に陥ってしまう。
1日でも入金が遅れているようであれば、「あなたの行動は監視してますよ?」という態度を入居者に示さなければいけない。
ただ、間違っても怒りの督促電話をしてはいけない。それは逆効果だ。
入居者はもしかしたら、
「銀行に行く時間がないほど忙しかったのに、1日遅れたくらいで文句言ってくんなよ!」
という気持ちかもしれない。
大家としては、
「遅れたほうが悪いんだろが!入金遅れは無銭飲食と一緒だ!契約社会をナメるな!」
という気持ちかもしれない。強く言いたくなるのも当然だ。
しかし、悪感情を投げれば悪感情が返ってくる。
怒りをこらえて、入居者の気持ちや事情も理解するように心がけることができれば、入居者も「遅れてすいませんでした」という気持ちになってくれるかもしれない。