築30年程度の中古戸建の階段には、手すりがついていない場合が多いです。
そのような住宅を購入して貸家にする場合、手すりは必ず設置しなければいけないのでしょうか?
それとも手すりの設置は、貸主の任意なのでしょうか?
手すり追加工事をおこなう際に調査して分かったことをお伝えします。
結論
平成12年(2000年)以前に建てられた住宅に関しては、手すりの設置義務はありません。
ただし、安全上は設置した方が望ましいです。
平成12年6月1日改正建築基準法の規定
平成12年(2000年)6月1日に、建築基準法が改正されました。
改正建築基準法では、階段への手すりの設置を義務付けています。
第25条
1 階段には、手すりを設けなければならない。
2 階段及びその踊場の両側(手すりが設けられた側を除く。)には、側壁又はこれに代わるものを設けなければならない。
3 階段の幅が3mをこえる場合においては、中間に手すりを設けなければならない。ただし、けあげが15cm以下で、かつ、踏面が30cm以上のものにあつては、この限りでない。
4 前3項の規定は、高さ1m以下の階段の部分には、適用しない。
※出典:建築プレミアム
第3章 一般構造関係の基準の見直し
質問23. 令第25条(階段等の手すり等)について、専用住宅の階段においても、必ず手すりを設けなければならないか?
回答23. 設けなければならない。
※出典:平成12年6月1日施行 改正建築基準法・施行令等の解説講習会における質問と回答
上記の規定は施行前の住宅への強制力を持たないため、「平成12年(2000年)以前築の中古住宅に関しては手すりの設置義務はない」ということが言えます。
借りる側は「入居前」に手すり設置を打診してみてください
設置義務がないとはいえ、手すりがないことによる階段転落事故は、ないに越したことはありません。
もしあなたが借りる立場で、平成12年以前築の階段に手すりがない家を借りようとしているのだったら、入居前に「階段に手すりを付けてほしい」と不動産屋さんに伝えてください(不動産屋さん経由で大家さんに伝えてもらう)。
サービス業としての常識を持った大家さんであれば、必ず手すりを設置するはずです。もし手すり設置を渋るような大家さんだったら、残念ながら他を探した方が良いです。入居後に何かトラブルがあっても、放置されてしまう可能性が高いからです。
入居した後に、「やっぱり危ないから手すりを設置してほしい」と言った場合はどうでしょうか。
入居後になってしまうと、「手すりがないことを承知の上で入居したんだろう!」と突っぱねられてしまう可能性が大です。
貸す側は階段の危険性を認識すべき
貸主は、
- 「昔は手すりがないのが普通だった」
- 「慣れれば危険はない」
- 「事故が起きても保険があるから大丈夫」
など、ひとりよがりな考え方をしてしまいがちです。
このような考え方をしてしまうような大家さんは、
- 昔とは時代が違う
- 危険予防
という視点を持つ必要があります。
階段の危険性を示すため、以下を引用します。
国民生活センターが収集した、子どもの事故で病院を訪れたケースでは、階段での事故が目立って多くなっています。
0~2歳、3~5歳とそれぞれの年齢層では第2位となっていますが、0~5歳までのトータルでは階段が第1位を占めており、どの年齢でも注意の必要な場所であるといえます。
平成17年の人口動態統計でも、家庭内における階段及びステップからの転落及びその上での転倒による死亡者総数は485人となっています。
※出典:ベビカム
もし、階段に手すりがなかったことが原因で死亡事故が起きてしまえば、その物件は「事故物件」になってしまいます。
家賃の下落や空室期間の長期化による損失は、手すり設置費用の何十倍にもおよびます。
手すり設置:ビフォー&アフター
前置きが長くなりましたが、手すりを設置したという作業報告が今回の記事のメインです。
手すりがないと降りるのも怖いです。
階段を降りる際、右手で手すりをつかめるように設置しました。
見上げたところです。
工事費内訳は、以下の通りでした。
- 丸棒ストレート35mm×4m:5,395円
- ブラケット:2,600円
- エンドキャップ:1,755円
- 工事費:12,000円
合計21,750円(税別)。
工事後、手すりが取り付けられた壁の裏側を確認したら、ネジが裏側に突き抜けていました(!)。
職人さんに指摘したところ、グラインダーではみ出した部分を削ってくれて、目隠し用に壁紙を貼ってくれました。もちろん追加費用は掛かりませんでした。
工事後に確認することの重要性を改めて認識した一幕でした。