「空室でも家賃収入を保証します!」
「30年一括で借上げます!!」
「所有不動産の資産価値を最大化します。」
「信頼できるパートナー。」
「安心の賃貸経営をサポート。」
空室対策に悩んでいる時ほど、上のような言葉に魅力を感じてしまうものです。
しかし、甘い言葉の裏にはワナが潜んでいます。
この記事では、業者の甘い言葉に乗ってしまい不動産投資に失敗してしまった方の話を取り上げます。
1)「家賃保証」を信じて借金だけが残った
「サブリース」に関する報道特集からの引用です。
男性は契約書に家賃改定の可能性があると書かれていることは認識していましたが、安定した収入になるという営業担当者のことばを信用しました。
しかし、2度にわたって家賃を減額され、さらにローンの返済額を下回る金額を提示されたため、去年(2014年)やむなく解約しました。
残されたのは3,000万円近くの借金と、半数が空き部屋のアパートです。
※出展:アパート建築が止まらない ~人口減少社会でなぜ~|NHKオンライン
「サブリース」とは、一言でいえば「又貸し」のことです。
※出展:東建コーボレーション
普通の不動産投資では、大家さんが入居者さんに部屋を貸します。
しかし、サブリースでは、大家さんは「サブリース会社」に部屋を貸します。
その後、サブリース会社が入居者さんに部屋を貸します。
入居者の有無にかかわらず、サブリース会社は大家さんに保証料(サブリース会社が大家さんに払う家賃のようなもの)を支払う責務を負います。
一見、大家さんにとって美味しすぎる仕組みにも見えますが、当然ウラがあります。
サブリース会社は、入居状況によって保証料の減額を要請することができます。
保証料の減額には大家さんの同意が必要ですが、同意に至らない場合、サブリース会社はサブリース契約を解除することができます。
するとアラ不思議、空室だらけのアパートと莫大な借金返済が後に残るだけです。
借金でアパートを建てた大家さんにとっては、借金返済額よりも低い額の保証料をもらっても、赤字が積みあがってしまうだけです。
泣く泣く保証料減額に応じるか、怒りに任せてサブリース会社と縁を切るか。
放送の中では、保証料減額を断った大家さんがサブリース契約を解約されてしまい、借金返済に苦悩している姿が出てきます。
2)広告料を取られた!
大家さんがお互いの相談に乗っている掲示板、「お悩み大家さん」からの引用です。
敷金は不動産屋に取られ、借主の退去もままならない状態です。
このまま泣き寝入りになるのでしょうか?
※出展:不動産屋に騙されました。どうすればいいですか? |お悩み大家さん
「仲介した不動産屋が敷金を返してくれない」
「広告料という名目でお金を取られた」
という、色々突っ込みどころが多い悩み相談です。
まず、この相談者さんは大家さん本人ではないため、事実関係に曖昧な部分が多いです。
ベストアンサーへのお礼部分では、
敷金ではなく、つまり敷金をゼロにして礼金として20万不動産屋が受け取り
と書かれています。
つまり、「敷金は不動産屋に取られ(た)」という話は間違いということです。
敷金だろうが礼金だろうが、本来は大家さんが受け取るべきお金です。
敷金が20万円だった場合、不動産屋は大家に20万円をそのまま渡して、改めて広告料を請求するべきです。
しかし、20万円が礼金であったなら話が変わってきます。
礼金や前家賃などの合計金額から広告料を差し引いて、残りの額を大家に渡すという行動は、業務としては通常の範囲内です。
礼金が何か月分だったのか、不動産屋と大家の間で何か月分の広告料を約束していたのか。この相談では情報が足りないため、公正なアドバイスをすることは極めて困難です。
3)空室5割からの奇跡の生還
賃貸経営アドバイザーをされている方の文章を引用します。
S銀行の4.5%の金利かつ購入後2ヶ月で空室が5割近くになるという恐怖を体験しました。
※出展:不動産屋・不動産コンサルタントにお願いする前に|大家の味方
前述の報道特集と同様、この方も空室増加に伴うマイナスのキャッシュフロー、逆ザヤ、赤字状態を経験されています。
しかしその後、見事に逆境を克服し空室を埋めることに成功されています。
銀行が融資に積極的になるタイミングは、定期的に訪れてきます。
市場の流れに乗って保有物件を増やすことができても、借金返済に行き詰まってしまえば、物件を手放さざるを得ません。
資産を維持できるかどうかは、結局は投資家の力量に掛かっていると言えるでしょう。
まとめ
1)家賃保証や、2)広告料の話では、建築会社や不動産屋が悪者扱いをされていますが、事業者=大家にも責任があります。
1)「家賃保証」のケースでは、大家が保証料に目を奪われていた点を敗因として挙げることができます。
サブリース会社がどのように収益を上げようとしているかを考えることができれば、失敗を回避することはできたかもしれません。
見込客が少ない場所にアパートを建てるという行為は、ハイリスク・ハイリターンの事業です。
リターンだけ要求してリスクを避けるのであれば、事業に手を出すべきではありません。
2)「広告料を取られた!」のケースでは、大家の無知が原因と言えます。
不動産屋は正当に広告料を請求しているだけのように見えます。
3)「空室5割」のケースでは、安易な借金をしてはいけない、という教訓を学ぶことができます。
空室対策で必要になるのは、当事者意識や問題解決能力という、経営者として当然必要な要素に集約されるようです。