タイニーハウスとは?固定資産税等の費用およびメリット

FIRE・セミリタイア

お城のような邸宅。広大な敷地の豪邸。超一流ホテルのスイートルーム並の最高級マンション。

「家は広ければ広いほど良い。」というイメージをお持ちの方も多いかもしれない。

では、「部屋数が少なく狭い家」は、ダメな家と切り捨てるべきなのだろうか?
必ずしもそうとは限らない。むしろ「狭い家」が向いている人もいる。

タイニーハウスの発端

「タイニーハウス・ムーブメント」とは、

「住宅ローンや家賃の負担を減らし、小さな家でのシンプルなライフスタイルを目指す活動」

のことを言う。

「タイニーハウス・ムーブメント」自体はアメリカで始まった。
2004年の巨大ハリケーン「カトリーナ」や、2007年のサブプライムショックで、多くの人が家を失った。

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A "For Sale- Bank Owned" sign sits in front of a home in Pontiac, Michigan June 19, 2009. REUTERS/Rebecca Cook
※出典:NOLAReuter

「大きくて豪華な家は、本当に私たちに幸せをもたらしてくれるのだろうか?」という問いに、人々は真剣に向き合った。

タイニーハウスの特徴

そこで登場したのが、タイニーハウスという選択肢である。
タイニーハウスには以下のような特徴がある。

  1. 建物面積10平米から40平米の極小住宅
  2. 自作すれば数十万円という激安建築費
  3. 部屋が少ないため光熱費が少ない
  4. 掃除がカンタン
  5. 必然的に持ち物が少なくなる

以下のように30万円で買えるタイニーハウスも存在している。
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※出典:Wood楽 Yahoo店

タイニーハウスには、一般住宅と同様に断熱材やペアガラスなども利用できるため、快適な室内環境を保つことも可能である。

「トレーラーハウス」、「モバイルハウス」、「ログハウス」もタイニーハウスの一形態と言える。

トレーラーハウス

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※出典:日本トレーラーハウス協会

「トレーラーハウス」とは、住宅の下に車輪が付いている形式のもの。牽引車で引っ張って移動させることが可能だ。

モバイルハウス

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※出典:未来住まい方会議YADOKARI

「モバイルハウス」とは、トレーラーハウスの小型版。
軽トラックや普通乗用車を改造して、住居兼事務所として利用している人が多い。

ログハウス

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※出典:TALO

「ログハウス」とは、丸太を組んで作った住宅のことである。

タイニーハウスのイニシャルコスト(初期費用)

タイニーハウスを自作する時間や体力があり、狭い住居に抵抗がない人たちは、タイニーハウスの恩恵を最も多く受けられる。

しかし、多くの人は日々の仕事で忙しいため、家を自作している暇などない。制作を発注するか、完成品を運んでもらう必要がある。上下水道・電気というインフラ工事も必要になる。タイニーハウスを設置する土地も必要である。

これら諸費用を含めると、初期費用は数百万円に膨れ上がる。

項目 費用
本体価格 80万円
制作費 60万円
建築確認申請費 40万円
基礎工事費 40万円
給排水工事費 150万円
電気工事費 2万円
土地代 200万円
合計 572万円

※参考:木楽YADOKARI

上記は、一部屋6畳のタイニーハウスを元に計算している。
より広いタイニーハウスを購入するのであれば、広さに比例して費用は上昇する。

飲料水として井戸水を使用したり、排水処理に浄化槽を利用したりすれば、給排水工事費を半額程度に抑えることも可能だ。
コンクリートブロックなどを使う簡易基礎であれば、基礎工事費用を抑えることもできる。
また、タイニーハウスを設置する場所が「都市計画区域外」の場合は、建築確認申請が不要になる。
土地に関しては、借地にすることで初期費用や固定資産税を抑えることも可能である。ただしその場合は、地代を継続的に支払う必要が出てくる。

タイニーハウスのランニングコスト(継続費用)

タイニーハウスの維持に掛かる費用は、通常の住宅に比べれば安上がりになる場合が多い。

水道光熱費

部屋数が少ないため冷暖房コストが少なくなり、家電の数が減るために通常の電気代も減少する傾向にある。

一戸建てからトレーラーハウスに引っ越した家族の例では、一か月の電気代は1万円から3000円程度に減少したという。
※出典:greenz.jp

太陽光パネルや蓄電池を利用することで、電気代を0円に下げることも可能だろう。発電状況によっては売電収入を得ることもできるかもしれない。
ただし太陽光発電システムの導入費は100万円以上と高額なため、回収には10年~20年の期間を要する。

前述のように井戸水を利用したり、浄化槽や浸透方式を採用したりすれば、上下水道代を圧縮することも可能だ。
調理や暖房に関しても、薪ストーブやカセットコンロを利用することで抑えることもできる。

固定資産税(試算)

タイニーハウスは固定資産税の対象建物になるのか

固定資産税の対象となる「建物」とは、不動産登記法では以下のように定義されている。

土地に定着して建造され、屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、独立して風雨をしのぎ得る外界から遮断された一定の空間を有する建造物であり、住居・作業・貯蔵等の用途に供し得る状態にあるもの

※出典:成田市

給排水や電気工事・基礎工事が施されているタイニーハウスは「土地に定着」という記述に当てはまる。
タイニーハウスにも固定資産税が掛かると考えるのが妥当である。

ただし、モバイルハウス・トレーラーハウスなどの車輪付きで給排水や電気工事を行っていないものに関しては、「軽車両」として扱われる可能性もある。

課税標準額の算出方法

固定資産税は「課税標準額」によって決められる。
課税標準額は、建物自体の新築価格とは一致しない。また、経過年数によって建物の課税標準額は低下する。
例えばさいたま市の場合、木造の居宅の1平米あたりの新築課税標準額は「87,000円」となっている。
※出典:さがみ法律事務所

一部屋6畳のタイニーハウスの場合、建物面積は20平米弱となる。
87,000円×20平米は174万円だが、最初の固定資産税の課税時には既に1年が経過しているため、0.8という経年減点補正率が適用される。
結果、1年目の課税標準額は約140万となる。

この140万円の課税標準額に対し、

  • 固定資産税:1.4%
  • 都市計画税:0.3%

の合計1.7%が課税される。
※税率は自治体によって異なることがある。

以上より、タイニーハウス(建物)自体に掛かる1年目の固定資産税+都市計画税は約2.4万円と予想される。

建物の課税標準額は年数の経過とともに減少していき、27年目以降は経年減点補正率0.2が適用される。
27年目以降のタイニーハウス(建物)の課税標準額は28万円となる。
建物の免税点である20万円を下回らない限り、固定資産税および都市計画税は納めなければいけない。
27年目以降の固定資産税+都市計画税は約5000円弱と考えられる。

建物分以外にも土地分の固定資産税+都市計画税が掛かるが、タイニーハウス向けの郊外の狭い土地であればせいぜい年2~3万円程度であろう。

なお、都市計画区域外にタイニーハウスを設置した場合は都市計画税は掛からない。

一般住宅とタイニーハウスの比較

建物面積が100平米の新築住宅を建てた場合、建物の課税標準額は約700万円となる。1年目の税金は約12万円と予想される。
100平米の新築住宅と6畳のタイニーハウスを比べると、1年目の税金(建物)で10万円もの差が付くこととなる。

※土地(固定資産税)に関しては、小規模住宅用地(住宅1戸あたり200平米以下)の軽減措置が適用されるが、建物に関しては適用されない。
新築住宅に関する建物の軽減措置は、建物面積として50平米以上が必要である。タイニーハウスで50平米を超えることは基本的にはないと思われるので、新築住宅に関する軽減措置は無視する。

タイニーハウスは価値観の衝突を生む?

費用面以外にも考えなければいけない点もある。
狭い住居での生活に抵抗を示すメンバーが家族にいた場合、タイニーハウスでの暮らし自体が向いていない可能性もある。
「部屋数が少ない」「収納が少ない」「狭い」というタイニーハウスの特徴は、人によってはデメリットとなる可能性も充分にありえる。

親子でタイニーハウスに居住する場合を想定してみよう。
親は、部屋が少ないことによる家族のコミュニケーション機会の増加をメリットと考えるかもしれない。しかし、子どもはプライバシーの確保を求めるかもしれない。

収納場所が少ないことを「これで断捨離を進められる!」と前向きに捉える人もいれば、「モノの置き場がない!」と息苦しく感じる人もいるだろう。

「子どもの自立を促す」という意味では、タイニーハウスは理想的な住まいとも言える。
「自分の部屋が欲しいのなら、早くお金を稼げるようになって家を出ていきなさい。」と、子どもを自立に仕向けることができるからだ。
ただし、夫婦間の価値観にすれ違いが生じてしまった場合にも、配偶者が家を出て行ってしまう可能性は高い(w。

タイニーハウスでは家族間の価値観のすり合わせやコミュニケーションが非常に重要になるということだ。

まとめ

6畳のタイニーハウスを作るのに600万円近く掛かるのであれば、中古木造住宅を購入した方が経済的メリットは大きいと言わざるを得ない。

タイニーハウスを賃貸に出したところで、借りてくれる人を見付けるには相当な困難が予想される。受け取れる家賃も数千円がいいところではないだろうか。

タイニーハウスは、

  • 新築住宅が欲しい
  • 自分仕様の住宅が欲しい
  • 大きな家は要らない
  • 安い家が欲しい
  • 借金に縛られたくない

このような願望を満たすための手段と言える。

中古戸建投資に通じる部分も多いが、異なる部分も多いようだ。

2016/05/15追記

タイニーハウスに掛かる固定資産税について、販売各社に問合せた。数社から返信が来たので、内容を掲載。

A社

固定資産税に関しましてはあまり知識・経験がないため、あまり明確な回答ができずに申し訳ありませんが、農家の方が畑の隅に農機具小屋を建てたところ、税務署から通知が来て固定資産税を課税されたという話を聞いたことがございます。
従いまして、タイニーハウスにも課税される可能性はあると考えております。

B社

ご質問の課税についてですが、おっしゃるとおり、最終的には各自治体の判断によると思います。
ちなみに当社の場合(伊勢崎市)は、固定資産税は課税されませんでした。

C社

(商品名)は建物として作っており、固定資産税もかかってきます。
現在のところ、販売始めて1年程度のため、固定資産税のデータがないのが現状です。
自治体によっても算定の仕方が異なってくると思いますが規模が小さいためそれほどの額にはならないとは思います。
お答えにならず すみません。

(商品名)は断熱材も入った快適な小屋です。
キッチン、シャワー、トイレ等水回りの設置も可能です。

※アイキャッチ画像出典:ミニハウス屋

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