リバースモーゲージは老後の切り札として使えるのか?

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※出展:stay-home-mom.com

不動産担保ローンの一種に「リバースモーゲージ」というものがある。
かいつまんで言えば、「持ち家を担保にお金を借りて、生活費に充てる」という手法である。

リバースモーゲージとは

高齢期に所有し居住している住まいの資産価値を担保にして、年金(前借金)として受け取るスキームがリバースモーゲージである。

※出展:居住福祉をデザインする:民間制度リバースモーゲージの可能性(著:倉田剛)。以下、引用部分は本書から。

20代・30代の人がこのような方法を取れば、生活が破たんすることは目に見えている。
何十年分もの生活費に相当する高額な持ち家を、無借金で保有している人などほとんどいないからだ。
また、借金返済で持ち家を失ってしまった後の生活をどうするのか、という問題も残る。

リバースモーゲージが向いているのは、住宅ローンの返済が終わり、余命が予測しやすい高齢者層だけだ。
リバースモーゲージでは、契約者の死後、担保不動産は売却され借金は帳消しとなる。

一見、高齢者の現金収入としてリバースモーゲージは理想的な手法に見える。しかし、問題点も数多く存在している。
以下、リバースモーゲージの現状や課題について説明する。

日本におけるリバースモーゲージの歴史

日本では、1981年に東京都武蔵野市(PDFへのリンク)がリバースモーゲージを導入したのが、その始まりとされている。
2003年には、厚生労働省も「不動産担保生活福祉資金貸付制度」をスタートさせた。
2010年には、地方銀行の群馬銀行が老後生活資金長期融資商品「夢のつづき」を販売開始した。
中央三井信託銀行東京スター銀行なども類似の商品を販売している。
みずほ三井住三菱東京UFJといったメガバンクもリバースモーゲージ商品を開発している。
旭化成ホームズ、トヨタホーム、積水ハウスといった住宅建築会社も同様のサービスを展開している。

日本におけるリバースモーゲージの課題

利用件数の低調さについて、筆者が静岡県沼津市社会福祉協議会に尋ねたところ、
1)申請に必要な持ち家の鑑定評価費用の自己負担
2)住宅(土地)評価額の下限規定
3)推定相続人の連帯保証の取り付け
4)家族の同居の拒否
などの点が障害となって成約にまで至らないケースが多いと、担当者は話している(2011年12月7日)

1)鑑定評価費用の自己負担

リバースモーゲージを利用するためには、持ち家の鑑定を不動産鑑定士等に依頼する必要がある。その費用(20~30万円程度)は申請者の負担となる。

2)評価額の下限規定

持ち家(土地)の評価額が一定額を上回っていないと、融資の対象外となってしまうという問題もある。

3)推定相続人の連帯保証

日本におけるリバースモーゲージは、「リコースローン」という形態が主である。
リコースローンとは、きっちり過不足なく借金を返さないと債務者としての責任が消えない借金のことだ。
反対の言葉に「ノンリコースローン」というものがある。こちらは担保を処分した段階で債務が消滅する。

例えば、リバースモーゲージ(リコースローン)を借りた契約者が長生きして、その間に担保の土地が大幅に値下がりしたと仮定する。
この場合、契約者の死後に担保の土地を売却したとしても、銀行は借金の全額を回収できない。
借金返済に足りない分は、連帯保証人となった推定相続人(子ども等)が返済しなければいけなくなる。

このようなリスクが想定されるため、申請者の子ども等は連帯保証人になることを避ける傾向にある。

4)家族の同居の拒否

リバースモーゲージ契約では、契約者死亡後の物件引渡しトラブルを避けるためか、本人(および配偶者)以外の同居は許可されない場合がほとんどである。
健康上の懸念から子どもとの同居を望む高齢者にとっては申請をためらう原因となる。

フランスの「ビアジェ」は一つの選択肢

フランス社会には、18世紀ごろから現在まで続いてきている居住福祉プランで興味深い仕組みの「ビアジェ」がある。
高齢者の住んでいる家を売買取引するのだが、買い手は、高齢者が亡くなるまで代金の月賦払いが続く。
売り手が亡くなった時に月賦払いは終わって家が手に入る仕組みである。
その取引の射幸性を問題視する向きもあるが、合法的な不動産売買取引をベースに下個人年金契約、あるいは「民間制度リバースモーゲージ」とも考えることは現実的である。

フランスには「ビアジェ」という、リバースモーゲージに似た仕組みが存在している。
不動産の担保評価額に関わらず、売り手が生きている限りは月賦払いが続く仕組みだ。

ほとんどのビアジェは個人間取引のため、買い手が死亡した際のリスクヘッジとして生命保険が利用されている。
買い手が売り手より先に死亡した際には、生命保険を利用して債務が保証される。

売り手が長生きすればするほど、買い手は損をすることになる。
逆に、売り手が早く亡くなってくれれば、買い手は得をすることとなる。

ビアジェは「長生きは善」とする日本社会の倫理観に真っ向から衝突する制度のため、日本で導入するには多くの困難が予想される。
しかし、リコースローンや不動産鑑定費用の申請者負担など多くの問題点を抱える日本のリバースモーゲージと比べた場合、ビアジェの方がその「射幸性」の面からも、人気を得やすく普及しやすい制度と言えるだろう。

まとめ

現状日本においては、リバースモーゲージは老後資金の切り札とまでは行ってはいない状況である。

本書の筆者は、リバースモーゲージ普及のために次の点を挙げている。

・当初の契約時に取り決めた融資条件(融資限度額・金利)は固定であり、途中の変更は一切ない。
・契約終了時以降は自動的に生活保護に切り替わり、利用者(生存配偶者も)の終身居住権が明文化され保証される。
・政府系住宅資産価値保証保険の加入で連帯保証人は免除される。
・同居人に対する制約はない。
・生活上必要と認められる住み替え(買い替え)にも対応する。

なお、群馬銀行の「夢のつづき」では、「遺言信託」という方法を組み合わせることで推定相続人の連帯保証を不要としている。

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