※出展:Honto
本田直之氏の著書「脱東京:仕事と遊びの垣根をなくす、あたらしい移住」を読んだ。
本書の根底には、
- 「物質主義(※)に対する違和感」
- 「東京一極集中への疑問」
- 「自由な生き方の追求」
という考え方が存在している。
※「物質主義」とは、より多くのモノ、より高価なモノを手に入れることで人生の質が高まるとする考え方。
以下、本書から引用する。
「あたらしい移住」とは?
東京でも活躍していた人が、より自分のライフスタイルを重視して、ライフスタイル・バリューの高い町に移住し始めたのです、しかも、それは30代や40代の現役バリバリの人なのです。
あたらしい移住では、ほとんどの人が、一人でいくつもの仕事をしています。二足、三足のわらじを履いており、肩書きが一つでない人も多いのです。
あたらしい移住者たちは、みな自立しています。行政だけでなく、他人に依存することなく、能動的に働きます。
これまでの移住が「固定」と言えるのに対して、あたらしい移住は「移動」「自由」と言えるでしょう。住む場所も仕事も固定化されていた時代から、好きなときに好きな場所に移動しながら楽しく仕事をする自由な時代に変わってきたのです。
※一部略。
まるでセールスレターのようだ。
これだけ読むと、
「なんて素晴らしい生き方なんだ!ぜひともマネしたい!」
と思って飛び付いてしまう人もいるかもしれない。
実態は割り引いて考える必要がある。
移住先で仕事や収入を安定させるためには努力が欠かせない。
専門的な能力や実績、高度なコミュニケーション能力や発信力、そして何より行動力がなければ、単なる観光客で終わってしまうだろう。
著者の本田氏は、「あたらしい移住」の特徴として次の9つを挙げている。
- 複数の仕事
- 自立
- 能動的
- 東京を含む地域以外の仕事
- 東京でも活躍
- デュアルライフなど移動しながら生活
- 町おこしに貢献する
- 移動・自由
- 若手:30代、40代
「あたらしい移住」で成功するために必要な要素
著者は、「あたらしい移住」を成功させるためには次のような能力と思考が必要だと主張している。
「あたらしい移住」に必要な能力
- 発信力がある
- 価値の交換ができる
- クリエイティブセンスがある
- モバイル・ポータブルな仕事ができる
- ナイスである
- 自分でいろいろなモノや価値を創れる
- 人を巻き込める
- 地域のよさを翻訳・編集できる
- 何足ものわらじを履ける
- 自分で考える
- 依存しない
- 常に新しいチャレンジができる
- 東京や海外での修行経験
上の中で特に説明が必要だと思われる要素は、「5. ナイスである」というものだ。
著者は「ナイスである」ということについて、以下のように説明している。
ナイスな人とは、第一に人柄がよい人、すばらしい人間性を持っている人のこと。
第二に、貢献の気持ちがある人。誰かの役に立ちたいという気持ちがあることが大事です。
そして最後に、お金よりも経験を重視できる人。ビジネスで言えば、収益を上げることも大切ですが、それだけを追い求めるのではなく、価値の交換を理解していることもナイスな人の要素です。
要は「性格がよい」「人柄がよい」ということだろう。
「あたらしい移住」に必要な思考
- ライフスタイルがある
- 自分を持っている
- 常識に縛られない
- 生活水準ではなく、生活の質を上げることに興味がある
- 偶然を楽しめる
- 否定から入らない
- お金よりも経験・体験を重要視する
- 二毛作の発想ができる
- 夫婦ともに自立している
「ライフスタイルがある」という点は、実現したい明確な生き方(ライフスタイル)を持っているとも言い換えられる。
まとめ:副業と移住の両方を実現したい人にとって参考となる一冊
本書には14人の移住実践者が登場する。
各人の日常生活がカラー写真つきで解説されており、移住生活をイメージしやすい。
副業を通じて経済的に自立し、東京以外での暮らしも同時に考えている人にとっては、多くの示唆を与えてくれる一冊だ。
「あたらしい移住」のデメリット
以下は、独断と偏見による個人的感想。
本書では紹介されている事例が多く、全てを読みきろうとすると途中で飽きてしまう。
また、本書に登場する人物はハイスペックすぎて、普通の会社員にとっては雲の上の存在に見えてしまう。
東京で既に会社経営で成功している人も多く、普通の会社員が「あたらしい移住」を成功させることは非常に困難という印象を受ける。
本書では「町おこし」の例として、空き家や商店街などの再生、地域特産物のプロモーションなどを取り上げている。
私個人としては「町おこし」と聞くと、地域の祭や自治会の集まり、農作業・除草作業の手伝いなど、めんどうな近所付き合いを思い浮かべてしまう。
自分が興味を持てる「町おこし」だけに関われればありがたいが、現実問題としてはそうも言っていられないようだ。