家や部屋を貸していてトラブルに巻き込まれないよう、賃貸借契約に関する法律を理解しておきましょう。
※出展:合格しようぜ! 宅建士 2016 音声付きテキスト&問題集 下巻[権利関係等]。以下、出展元の記載がない場合は同著からの引用。
使用貸借とは?
「使用貸借」とは、お金を払わないで家や部屋を借りる行為です。
成人した子供が実家に住んだり、親の土地を無料で使わせてもらったり、親戚の家にタダで住まわせてもらう場合などが当てはまります。
使用貸借と賃貸借の違い
ケース | 使用貸借 | 賃貸借 |
---|---|---|
定義 | 無償での貸し借り。 実際に物の引き渡しが必要。 (要物契約) |
賃料を支払う貸し借り。 意思表示の合致で成立。 (諾成契約) |
無断転貸 | 貸主の承諾がなければ不可。 実施した場合、貸主は契約の解除が可能。 |
「配信的行為とは言えない特別な事情」があるときは、貸主は契約を解除できない。 |
費用負担 | 借主は修理代などを負担する。 | 修理代などは貸主の負担。 |
返還・解約 | 契約で定めた時期に返還しなければならない。 期間の定めがない場合は、貸主はいつでも返還を請求できる。 |
借地借家法の適用がある場合、貸主からの解約の申し入れは、正当な事由があれば可能。 |
借主の死亡 | 効力を失う。相続不可。 | 賃借権は相続人に相続される。 |
譲渡 | 貸主が譲渡した場合、対抗できない。 | 賃借権は登記可能。 登記されていれば対抗も可能。借地借家法の対抗要件もある。 |
賃貸借契約とは?
賃貸人(貸主・大家)の義務
使用収益
賃貸人は賃借人(入居者)に目的物を使用収益させる義務を負います。
使用収益とは、目的物を自らの利益のために使用することです。
修繕義務
賃貸人は、修繕義務を負います。
賃貸人が保存に必要な行為(設備の修理等)を行う時、賃借人は拒むことができません。
費用償還
賃借人が修理費など(「必要費」と言う)を支出した場合、直ちに賃貸人に償還請求ができます。
賃貸人は、賃借人からの請求に応じる必要があります。
賃借人が物件や設備を改良する費用(「有益費」と言う)を支出した場合、賃貸借終了時にその価値が現存する場合に限り、支出額または増加額を賃貸人は負担する必要があります。
賃貸人は、負担費用として支出額または増加額のいずれかを選べます。
必要費および有益費の償還は、賃貸人が目的物の返還を受けた時から、1年以内に行う必要があります。
賃料減額
賃借人の責任によらない一部滅失(地震で物置が壊れた等)があった場合、賃借人は滅失割合に応じた賃料減額請求をすることができます。賃貸人はこれに応じる必要があります。
物件の残存部分だけでは契約の目的を達成できないとき、賃借人は契約を解除することができます。
賃借人(借主・入居者)の義務
賃料支払
宅地又は建物の賃借人は、特約がなければ毎月末に賃料を支払わなければいけません(後払い)。
善管注意
賃借人は善良な管理者の注意を持って、賃借物を保管しなければいけません。
「善良な管理者の注意義務」とは、業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務のことです。
通知義務
賃借物に修繕が必要となった時、または賃借物について権利を主張する者が現れた時は、遅滞なくその旨を賃貸人に通知しかねればいけません。
ただし、賃貸人が既にそのことを知っている時は通知の必要はありません。
期間・更新
- 賃貸借の存続期間は20年を超えることはできません。
- 賃貸借の存続期間は更新することができます。
黙示の更新
- 賃貸借の期間が満了した後、賃借人が賃借物の使用収益を継続し、賃貸人がこれを知りながら意義を述べなかった時は、従前の契約と同一の条件でさらに賃貸借をしたものと推定します。
- 期間の定めのない契約となり、当事者はいつでも解約の申し入れをすることができます。
いわゆる「法定更新」です。
まとめ
「一部滅失による賃料減額」は知りませんでした。
もし知っていれば、結露による水漏れで退去した埼玉のアパートで
「直るまで家賃タダにして。」
という交渉材料に使えたかもしれません。
交渉がうまくいくかどうかは別の話ですし、いろいろ揉めたりして面倒なことになっていたとは思いますが。