「賃貸住宅トラブルの対処法と発生予防策」セミナーレポート:家賃保証会社の審査は意外とゆるい?

セミナー

kamakura-kan
2016年8月20日、鎌倉芸術館にて開催された不動産投資セミナー「賃貸住宅トラブルの対処法と発生予防策」に行ってきた。
家賃保証会社の審査基準や、値下げに頼らない空室対策など、参考になった。
以下、覚え書き。

※メモに基づいた再現内容。

第一部:リクルートフォレントインシュア・野村氏「データから見る延滞傾向」

1)家賃保証業界は新しい業界

リクルートフォレントインシュアは創業から10年。
家賃保証業界自体、比較的新しい業界。
「日本賃貸保証」という会社が日本初の家賃保証会社。1995年に設立。
家賃保証業界には特に許可制や規制などが存在しないため、参入してくる会社も多い。
ただし、つぶれる会社も多い。有名どころでは2008年に倒産した「リプラス」など。

業界での入居者データの共有体制

LICC(一般社団法人 全国賃貸保証業協会)という業界団体で入居(申込)者のデータベースを共有している。参加会社は14社。
ほかにも株式会社CICという信販・カード系のデータベース共有団体もある。CICのデータには、携帯電話の割賦販売のデータも反映されており、20歳以上の国民の約80%が登録されている。過去5年分の滞納履歴などがわかる。
LGO(一般社団法人 賃貸保証機構)という業界団体もある。こちらは貧困層など弱者救済のルール作りに力を入れている。参加会社は4社。

Web重説と民法改正の影響

2015年にWeb重要事項説明が始まったり、数年以内に民法改正が予定されていたり。
民法改正以降は、連帯保証人契約の極度限度額の明記が必要になる予定。

家賃保証会社はこうやって入居者を審査している

申込者の職業だけでは判断していない。
社内独自データや、LICCおよびCICのデータベース情報を柱として入居審査をしている。
ほかにも、裁判所の情報、反社会的勢力の情報、これまでの契約者のデータベース、官報なども参考にしている。
加えて、過去10年分の地方紙を含む新聞情報を用いて、犯罪者データーベースも作っている。
ただし、疑わしい人を全て審査で落とすのではなく、ある程度のリスクは取っている。

家賃保証会社の登録制度が始まりそう

国交省が家賃保証会社の登録制度の検討を始めたというニュースもある。

2)契約データから見る延滞傾向

北海道のトラブル発生率は全国平均の3倍

神奈川は全国的に見て平均的な滞納率。
北海道は、長期(3ヶ月以上)の滞納率が高い。
沖縄は初月での滞納が多いが、長期滞納は少ない。
地域的な特性がある。

北海道では、滞納や明渡請求などで訴訟になる割合が、全国平均の約3倍。
対して、沖縄ではトラブル発生率も低く、家賃も高い傾向がある。

中年男性の滞納率が高い

10代は初月滞納率が高い。長期滞納は低い。
女性は全体的に滞納率が低い。
男性の40代~50代が、最も滞納率が高い。
独身男性とファミリー男性(契約者が男性)を比較すると、独身男性の方が滞納率が高い傾向がある。
独身女性とファミリー女性(シングルマザー)を比較すると、ファミリー女性の方が滞納率が高い。

家賃が安いほど滞納者が増える

家賃が安いほど滞納が発生する傾向がある。
家賃が高い側(15万円以上)では、滞納発生率自体は低いが、滞納が長期化する傾向にある。

敷金ありだと滞納者は減る

敷金なしのほうが滞納発生率は高い。
シングルよりもカップル、カップルよりもファミリーの方が、入居期間は長い傾向。

敷金ありにしたほうが結果的にはお得

敷金ありなどで初期費用が高額の場合と、敷金なしの場合を比較。
「敷金なし」が「敷金あり」より3ヶ月早く入居が決まったとしても、平均入居期間は「敷金なし」の方が半年以上短い。
よって、最終的には「敷金あり」の方が総収入は多くなる。

3)SUUMOのデータからわかること

3件に1件は礼金ゼロ

礼金ゼロ物件の比率が右肩上がりで上昇している。
3件に1件は礼金ゼロ物件。
敷金も同様の推移。

新築でも家賃は下落傾向

掲載賃料・反響賃料の両方が下がっている。(※1)
都心7区のみ上昇傾向。(※2)
※1:掲載賃料とは、SUUMOに登録されている物件の平均賃料。反響賃料とは、入居希望者から問い合わせのあった物件の平均賃料。
※2:港区、渋谷区、目黒区、中央区、千代田区、新宿区、文京区。

築20年~25年への反響が最多

築20年~25年の物件への反響が多い。
家賃も割安でリフォームされている物件には需要がある。

[事例A] 横須賀:カップル多し

1LDK~2DKの間取りが最も需要が高い。カップル向け。
20代前半~30代がメインターゲット。
マンションタイプで家賃6.5万円~7.4万円あたりが、反響のピーク。

たとえば、6.3万円の物件で空室に悩んでいた場合、5.9万に値下げするよりも、6.6万円に値上げした方が反響を得られる可能性が高い。
なぜなら、スマホで探しているお客さんが多いから。PCのように網羅して物件を見るのではなく、一定の価格帯だけ見ている人が多い。

[事例B] 東戸塚:ファミリー主体

ファミリータイプの需要が6割以上。
ここでも反響ゾーン(顧客からの反響が最も高い価格帯)に自分の物件を入れることが重要。

[事例C] 上大岡:シングル主体

シングル、カップル多し。

まとめ:反響ゾーンの家賃を見極めろ!

管理会社と協議して、反響ゾーンに自分の物件を入れることが最重要。

休憩

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※イメージ。


第二部:CFネッツ・伊藤氏「管理業者ができること」

2大トラブル:エアコン故障と騒音

管理でよくあるトラブルとしては、

  1. エアコンの故障
  2. 給湯器の修理
  3. 共用灯の交換

が設備面ベスト3。
ソフト面では「生活騒音」が首位。

道路を挟んだ向かいの土地から木の枝が伸びてきたトラブルもあった。
登記簿からも所有者を見つけられなかった。
電線が危険ということで、電力会社に頼んで切ってもらった。

高齢単身者の4人に3人が孤独死!?

65歳以上の独居者の死亡場所の75%が自宅、という怖いデータもある。

自社審査の基準

自社審査の際には、新聞記事の犯罪者情報を参照している。
確実にトラブルにつながりそうな人は審査で落としている。
生活保護者も、過去に全てトラブルになってしまった経緯があり、現在のところ審査を通していない。

自社審査の通過率は90%弱。業界の平均に近い。

保証会社の審査が厳しすぎると保証会社の意味がない。(※)
保証料と通過率のバランスが重要。
※大家が自主管理で審査すれば、そもそも保証料不要だから。

不動産業界特有の問題:サブリースによる経営不振、人材不足

サブリース業者が家賃を持ち逃げ・夜逃げするという事態も毎年1件は発生している。

賃貸仲介は人材不足が続いている。売買仲介や他業種に、優秀な人材はどんどん流出してしまう。

宅建業者はコンビニよりも多い。過当競争が続いている。
業者数が12万、従事者数が50万。単純計算すると1社あたり4人。小規模事業所だらけ。

感想:家賃保証会社の審査は意外とゆるい

家賃保証会社がどのように審査をおこなっているのか、内幕を知ることができた点は収穫だった。
個人的には、大家が自主管理でおこなう審査の方が、家賃保証会社の審査よりも緩いイメージがあった。
実際は逆のようだ。
家賃保証会社はリスクを取っている分、家賃保証料というサービス料を受け取っているのだから、当然といえば当然だが。

ほかにも、延滞率や反響ゾーンの話は面白かった。

第三部のパネルディスカッションは聴かずに帰ってきてしまった。3部まで含めると3時間を越えてしまうので…。

賃貸経営におけるトラブルや有効な空室対策について知りたい大家にとっては、学びの大きいセミナーだった。

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