タダ飯と無料宿泊に釣られて魔界に引きずり込まれそうになった

失敗・教訓

この記事で伝えたいことは「タダより高いものはない」というありがちな教訓です。

・勧誘を断るのが苦手な人。
・他人の考えは(極端な考えであっても)尊重したいと思っている人。
・「農業ボランティアに行ってみようかな」と考えている人。
このような人たちの参考になればと思います。

1. 農業ボランティアに行った

数年前、農家に一週間だけ泊めてもらったことがあります。
タダで泊めてもらう代わりに、農作業を手伝うことになっていました。
いわゆる「農業ボランティア」というやつです。

当時の私は自給自足生活に興味を持っていました。
「農業の勉強にもなるし、メシも宿代もタダなんて、最高やんけ!」
などと、のんきに考えていました。

宿泊先の農家はインターネットで見つけました。
体験談などは載っていませんでしたが、その農家の最寄駅や所在地には何度か行ったことがあり、土地勘があったからです。
最悪の場合は、途中で脱走して帰ってくればいいだろうと思っていました。

その軽い気持ちがマチガイの始まりでした。

2. 陰謀農家、襲来

滞在が始まると、その農家の主人はかなり偏った思想の持ち主だということが分かりました。

いわく、
「ケムトレイルも知らんのか?お気楽なやつめ…。」

「ケムトレイル」とは、製薬業界の利益を増やすために、政府関係者が有害物質を空中から散布しているという説。陰謀論の一つ。

いわく、
「世界経済はユダヤ人銀行家によって支配されているんだぞ!お金の価値なんて、やつらの気分次第で簡単に暴落するんだ。貯め込んだって意味がない。」

「ユダヤ陰謀論」とは、ロスチャイルド家などのユダヤ系財閥が世界経済を裏から操っているという説。陰謀論の一つ。

このような話をよくしていました。

3. 危機一髪!恐るべき洗脳教育

最大の恐怖は、夕方から夜にかけてスケジューリングされていた謎の「読書時間」でした。

読書とは名ばかりで、農家の主人が選んだ本を彼と一緒に読む時間です。
「教育勅語」とか「論語」、その他よく分からない古い本や前述したケムトレイルやユダヤ陰謀論に関する本もありました。

1日目は、
(何をどう間違ったらこんな荒唐無稽な説を信じられるんだ?)
という好奇心もあり、軽く付き合ってみました。

しかし2日目からは、
「頭が痛いので。」
という理由で拒否しました。

彼が教育勅語や論語を私に読ませようとした背景には、年長者への敬意や恩義を植え付けようという意識もあったようにも思います。

4. 朱に交われば赤くなる

この農家には主人の弟子が何人か出入りしていました。彼らも主人と同じような思想を信じていて、当然のように、
「飛行機が上空を飛んだら屋内に避難した方がいい。」とか、
「三百人委員会は問題だ。」とか、
「電子レンジは健康に良くない。」とか話していました。

「三百人委員会」とは、ユダヤ系銀行家など裏社会のトップ約300人が世界経済を裏から操っているという説。陰謀論の一つ。

最初のうちは
(はぁ?何言ってんだこいつら?)
という気持ちだったのが、徐々に
「んー、そういう考え方もあるのかなー」
くらいに自分の態度が軟化していきました。

明らかに異常なものであっても、周囲や環境がその異常で溢れていると、人は異常を正常として受け容れてしまいます。

農村という閉鎖的な環境も洗脳にはうってつけの場所です。都会とは異なり、多様な価値観に触れる場所が極端に少なく、会う人の影響を受けやすいです。

5. タダより高いものはない

この滞在を終えた後、農業ボランティアに関わることは二度とありませんでした。

農業ボランティアが嫌になった理由は、
・自由時間が少ない。
・周囲に遊びに行く場所がない。
・思想を操られそうになった。
といった点が多大なストレスだったためです。

洗脳教育を毎日受けていたり、数ヶ月の長期滞在をしていたら、私も陰謀論者になっていたかもしれません。

タダ飯と無料宿泊に釣られた私がバカでしたが、この件から学んだ教訓は、
・必ず体験談をチェックしよう。
・違和感を感じたらすぐ逃げよう。
・判で押したような同じ価値観を持っている集団と長時間一緒にいると、価値観は伝染する。
・「名ばかりボランティア」には気を付けよう。

という点です。

私が経験した「農業ボランティア」は、ボランティアの名を借りた「布教活動」でした。
「タダ飯と無料宿泊を提供してもらっている」という参加者の後ろめたさにつけこみ、思い通りになる弟子を増やそうという主催者の歪んだ意図を感じました。

6. 陰謀農家を思い出したきっかけ

ちなみに「陰謀論大好き農家」を思い出すきっかけとなったのは、以下の現代ビジネスの記事です。

「エホバの証人」元信者の告白…宗教の勧誘、実はこんな人たちをターゲットにしている(佐藤 典雅) @gendai_biz
最近、NHKオンデマンドの『未解決事件 File.02 オウム真理教 17年目の真実』を見た。なぜ、愛を教えているはずの宗教団体がなぜ大量殺人を計画するのか。実は私はこの時24歳で、ちょうどものみの塔(通称エホバの証人)の世界本部で集団生活をしている時だった。当時の教団の総本山であるブルックリンに3000人の熱心な信者...

※アイキャッチ画像:いらすとや

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