取引形態「売主」の物件はローリスク・ローリターン 売主物件のメリット10個

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※出展:Huffington Post

物件を探していると、取引形態が「売主」となっているものがたまに紛れ込んでいます。
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※出展:楽待

売主物件とは、不動産屋さんの自己所有物件のことです。
一般媒介物件と比べて売主物件では、消費者を手厚く保護しようとする仕組みが取られています。
以下に売主物件のメリットについて説明します。

売主物件のメリット

  1. 仲介手数料が不要
  2. 話が早い
  3. 自己所有の物件に限定される
  4. クーリングオフが使える
  5. 多額の損害賠償を請求される恐れがない
  6. 多額の手付金を請求される恐れがない
  7. 瑕疵担保責任がある
  8. 手付金が保護される
  9. 分割払いが滞っても、いきなりペナルティを受けることがない
  10. 所有権を確実に取得できる

一つずつ見ていきます。

1. 仲介手数料が不要

売主物件では、買い手と売り手の間に不動産屋さんが介在しないため、仲介手数料が不要になります。

例えば400万円の物件だったとしたら、194,400円の売買仲介手数料が発生します。2000万円の物件だったら、712,800円です。これが不要になります。
※売買仲介手数料はこちらから計算できます。

2. 話が早い

間に不動産屋さんを挟む必要がないため、すぐに交渉の結果が分かります。
ただし、知識豊富な不動産屋さんを相手に直接交渉することになるので、値下げ交渉の余地はあまりないです。

3. 自己所有の物件に限定される

ここから先は宅建業法の「宅建業者が売主となる場合の制限」に基づく売主物件のメリットです。
売り手が宅建業者(不動産屋さん)で、買い手が一般消費者の場合に適用されます。

不動産取引の経験や知識が豊富な不動産屋さんと、経験も知識も少ない一般消費者が相対取引をした場合、不動産屋さんが圧倒的に有利です。
そのため、宅建業法により不動産屋さんには8つの制限が課せられています。

一つ目の制限が、自己所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限です。

普通は、「自己所有ではない物件を売るなんてできるわけないんじゃない?」と考えてしまいます。
しかし民法では、

他人の所有物を入手する前に、自分が売主という立場で売却してよい。
他人から入手できず買主に渡せなかった場合、買主は契約を解除して、損害賠償を請求できる。

と定められています。
※出展:合格しようぜ! 宅建士 2016 音声付きテキスト&問題集 上巻[宅建業法・法令上の制限]。以下、出展元の記載がない場合は同著からの引用。

この民法の条文を逆手に取って、引き渡しができるかどうか不明な他人の物件を勝手に売却してしまう悪質な業者が出てこないとも限りません。
代金さえ手に入れてしまえば、当面の運転資金として利用することもできますし、海外逃亡でもすることも可能です。
いずれにせよ、売主物件ではこのような悪質な行為はハッキリと禁止されています。
売主物件でれば、悪質な業者に騙される可能性は非常に少ないです。

4. クーリングオフが使える

売主物件の二つ目の制限は、クーリングオフです。
売主物件であれば、契約日・申込日から8日以内であれば、契約・申込の取り消しが可能です。

「クーリングオフ制度の適用がない事務所等」以外の場所で、買受の申し込みをした申込者・売買契約を締結した買主は、無条件で書面により申し込みの撤回・売買契約の解除をすることができる。
契約の解除(申し込みの撤回)は、書面を発信した時に効力が生じる。
売主業者は損害賠償や違約金の支払いを請求できない。
受領していた手付金なども返金しなければならない。
買主に不利な特約は無効となる。

「クーリングオフ制度の適用がない事務所等」という部分に注意が必要です。
買主の自宅や勤務先、もしくは宅地建物取引士がいる事務所や案内所などが「適用がない事務所等」に当たります。
買主が冷静に判断できる場所は、対象にならないという基準です。

冷静に判断できる場所に「宅建取引士がいる事務所」が含まれているのが興味深いです。
取引士は、売主・買主のどちらか一方に肩入れしてはいけないし、法律に反するような行動を監視する責任を負っているということが言えます。

5. 多額の損害賠償を請求される恐れがない

売主物件の3つ目の制限事項は、損害賠償額の予定等の制限です。
売主物件では、代金の2割を超える損害賠償請求はできません。

6. 多額の手付金を請求される恐れがない

売主物件の4つ目の制限事項は、手付の額の制限等です。
手付金は代金の2割までと決められています。

7. 瑕疵担保責任がある

売主物件の5つ目の制限事項は、瑕疵担保責任についての特約の制限です。
一般消費者同士で中古住宅を売買する際は、「瑕疵担保責任の免除」(※)という特約条件が付くことが普通です。
※瑕疵担保責任とは、売買後にひどい雨漏りや構造部の問題などの「瑕疵」が見つかった際、買主が責任を負うというもの。

しかし売主物件の場合は、「瑕疵担保責任の免除」という特約は認められません。
宅建業法では、以下の制約が売主業者に課されます。

瑕疵担保責任を負う期間が「目的物の引き渡しの日から2年(以上)」となる特約はOK。

民法では、「買主は瑕疵を発見した時から1年間、売主に瑕疵担保責任を追及できる」という規定があります。
これでは買主は永遠に瑕疵担保責任を負ってしまいます。
そのため、現実的な路線として「引き渡しから2年」という期限が設けられています。

8. 手付金が保護される

売主物件の6つ目の制限事項は、手付金等の保全です。
物件引渡し前に支払う「手付金」ですが、売主物件の場合は以下の3種類の方法で保全されます。

  1. 銀行による「連帯保証」
  2. 保険会社による「保証保険」
  3. 指定保管期間による「保管」

ただし、未完成物件の場合は「3.保管」は認められていません。

また、以下の場合は手付金が保全されませんので注意が必要です。

  • 買主への所有権移転登記がされた時
  • (未完成物件の場合)手付金の額が代金の5%以下、かつ1000万円以下の時
  • (完成物件の場合)手付金の額が代金の10%以下、かつ1000万円以下の時


9. 分割払いが滞っても、いきなりペナルティを受けることがない

売主物件の7つ目の制限事項は、割賦販売契約の解除等の制限です。
住宅ローンは「割賦販売」には含まれません。
買主が直接、売主に代金の分割支払いをする場合を「割賦販売契約」と言います。
万一、割賦支払いが滞ったとしても、売主が残金の一括支払いを求めたり、売買契約自体の取り消しを主張したりすることができないというルールです。

10. 所有権を確実に取得できる

売主物件の8つ目の制限事項は、所有権留保等の禁止です。
前述の割賦販売の場合、全額の支払が終わるまで売主が物件の所有権移転を留保する可能性が考えられます。
代金のかなりの額を買主が支払い終わっているにも関わらず、売主が物件の所有権を保持している状況はどう考えても理不尽です。

宅建業法では、

  • 売主業者が受領した金額が代金の3割以下である時
  • 代金の3割を超える額を受領することになっても、残代金につき買主が抵当権の設定や保証人を立てる見込みがない時

上記2つの場合を除いて、所有権の留保を認めていません。

まとめ:売主物件はローリスク・ローリターン

売主物件では、知識・経験面で劣る一般消費者を保護する目的でさまざまな制限が課されています。その分、売主の不動産屋さんにとっては面倒や手間が多い取引とも言えます。
ただでさえ不動産取引情報に詳しい不動産屋さんを相手しなければいけない上に、不動産屋さんにとって手間の多い取引となると、大幅な値下げを期待するのは難しいです。
大きな不具合や騙される可能性が低いという点を重視するのであれば、売主物件にも検討の余地はあります。
しかし利回りを重視するのであれば、売主物件は調査対象としては不適切と言わざるを得ません。

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