「生きづらさ」の原因

スウェーデンをパクれば?


画像の大部分はいらすとやさんから、日本地図は日本地図イラスト集さんから。

高齢ドライバーの交通事故。
10連休でも休めない人々。
やりがい搾取やブラック企業。
今の日本ではあらゆる集団が利害対立し、罵声を浴びせ合っているようにも見える。まるでホッブズの言う「万人の万人に対する闘争(*)」状態だ。
* 自然状態では人間は利己的で、自分の利益のため互いに闘争するということ。デジタル大辞泉より。

この社会の分断の原因は何だろうか。
私は、小泉純一郎氏の「構造改革」が根底にあるのではないかと考えている。

自己責任教

2001年から2006年にかけて行われた「聖域なき構造改革」では不良債権処理、規制緩和、財政再建などが実行された。株価や地価は上昇し、失業率も低下した。経済は一時的には回復した。しかしその代償として「自己責任」という言葉が国民の心に強く刻まれてしまった。

貧困で苦しんでいる老人は、若い時に老後資金を準備しなかったんでしょ。自己責任。
子供の教育費や生活費で苦しんでいるシングルマザーは、そうなることを承知で離婚・出産したんでしょ。自己責任。
30代・40代にもなってろくな仕事が見つからないのは、スキルを身につける努力を怠ったからでしょ。自己責任。

あらゆる問題が「自己責任」という大義名分のもとに放置されている。

北欧の劣化コピー

老後の不安、子供の教育費の不安、失業の不安。社会全体を覆っているこれらの不安とは無縁のように見えるのが、スウェーデンやデンマークなどの高福祉国家だ。それでは、スウェーデンの社会システムを日本に輸入すれば万事OKなのか?当然そんなわけはない。走るのがやっとのボロ車からめちゃくちゃ速いF1カーに乗り換えたところで、運転者がポンコツだったら大事故を起こすだけだ。

弱者救済から社会扶助へ

「構造改革」からもうじき20年が経つ。そろそろ自己責任教から目覚めてもいい頃だろう。

実は、脱洗脳の道筋は10年も前に既に示されている。
以下、橘木俊詔氏の著書「安心の社会保障改革」から引用する。

(デンマークでは)福祉国家の原則を 『豊かな者が貧しい者を助ける 』ということから 、 『社会 (公的 )扶助は国民の権利であり 、施しではない 』という原則に持っていった。

日本では2019年現在も、「豊かな者が貧しい者を助ける」原則が適用されている。寄付やボランティアへの関わりを示す国際指標「World Giving Index(2018)」で、日本は128位(144ヶ国中)。日本が助け合いの社会ではないことが裏付けられている。
たとえ自分がお金持ちでなくとも困っている人には手を差し伸べるべき、という社会に転換しなくてはならない。

ヨ ーロッパにおける救貧法の出発点は 、キリスト教における博愛の精神にあることは確実であるし 、教会や修道院が資金を集めて救貧活動をしていたことも事実。

日本は無宗教で個人主義の社会だ。博愛精神とは真逆のような現在の価値観を変えるには、コミュニティの再構築がカギとなるだろう。

福祉国家としての社会契約

(高齢者と若者の)損得論議が生じないようにするのが税方式である。
なぜ日本人が消費税などの増税に共鳴しないのかは 、国民一般の政治の世界や役人への不信がある 。

福祉国家へ転換するには以下の2つの作業が欠かせない。
1)国民の間で福祉国家への転換を合意すること。
その上で、
2)超党派の長期的な議論を国会で行うこと。
分断された社会では国民間の合意は成立しない。世代や階層を超えた議論の場が必要だ。

出生率低下と人手不足の解決法

出生率低下と人手不足という二大問題を解決するのための切り札は、仕事と子育てを両立できる環境の整備だ。現状では、共働きをしても仕事と家庭を両立できる見込みが薄いため、未婚化≒少子化が進行している。
このあたりは、筒井淳也氏の「仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか (中公新書)」に詳しく書かれている。

以下、同書より中略引用する。

総合職的な働き方を日本人男性がなんとかこなしてきたのは 、私生活をサポ ートする仕組みがあったからである 。それは男性にとっては妻である。その結果 、女性の側がキャリアを断念することになりやすい。

女性が今よりも働きやすくなるためには、
1) 社会全体で総合職的な働き方をやめる。
2) 育児・家事・介護などの女性の負担を下げる。
上記二つを実現しなくてはならない。
2)に関しては、公的サポートはもちろん、夫の家事負担増も必須となる。

賃金上昇

社会保障や公的サポートを充実させるには国民負担を上げる必要がある。しかし、賃金減少と国民負担増が同時進行すれば、国民の生活は破壊される。国民の負担感を減らすには、賃金上昇が欠かせない。

賃金上昇については、大和総研の「スウェーデンの社会保障に学ぶ」というレポートが参考になる。
このレポートの要点は、スウェーデンでは最低賃金の厳しい規制があるため、生産性の低い企業は淘汰される仕組みになっている、ということだ。さらに、政府は効率の低い企業を延命させるのではなく、失業者に再教育を行うことに力を注いでいる点にも注目すべきだろう。

行うは難し

今まで見てきたように、解決の道筋は既に示されている。あとは実行するだけなのだが、それが一番難しい。かく言う私も、新しい物件をぜんぜん購入できていないし、仕事に必要な資格試験にも落ちまくっている。なにごとも思うだけなら簡単だが、結果を出すことは簡単ではないようだ。