「旧既存宅地」の二つの大きなデメリット

不動産経営

「旧既存宅地」と記載されている物件チラシを目にした。

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「既存宅地」制度は2001年に廃止されている

「旧既存宅地」物件は非常に安く販売されている。
安さには当然理由がある。

「既存宅地」とは、市街化調整区域(※)の指定を受ける以前から存在していた住宅地のことだ。
市街化調整区域の土地は、住宅の建築が困難で利用価値が低いため、地価が安い。
※市街化調整区域とは、家の新築などを自由に行うことができない地域。開発には都市計画法の許可が必要。

以前は「既存宅地であれば開発許可は不要」という特例を受けられたが、2001年の都市計画法の改正により、この特例を受けることはできなくなった。
※参考:「既存宅地制度の改正と重要事項説明」(不動産適正取引推進機構)

既存宅地の頭に「旧」という言葉が付いているのは、既存宅地制度が既に廃止されているからだ。

既存宅地制度に代わる救済策

なぜ、不動産業者はわざわざ「旧既存宅地」などという、わかりにくい言葉をチラシに載せているのだろうか?
それは、「市街化調整区域だからといって全く価値がないわけではないですよ!」ということを買主に伝えるためだ。

自治体によっては「旧既存宅地」に対する救済措置を実施しているところもある。
例えば横浜市。
「都市計画法に基づく市街化調整区域の立地基準及び開発許可の基準」第6号には以下のような記載がある。

基準第6号 既存建築物の増築、建て替えに係る特例措置

既存建築物を引き続き増築又は建て替えをする場合において申請の内容が次の各項に該当するものであること。

(適用対象)
1 次の各号のいずれかに該当する建築物であること。
(1)市街化調整区域となる依然に建築された建築物(市街化調整区域指定後、当該建築物において、増築、建て替え又は用途の変更を行なったものを除く。)
(2)市街化調整区域指定後、適法に新築、増築、建て替え又は用途の変更を行なった建築物。ただし、基準第4号「農家等の分家住宅」による許可を受けた建築物の場合は同一の申請者(相続により当該建築物を取得した者を含む。)とし、その者により引き続き分家住宅として利用されていること。

(立地基準)
2 既存の建築物と同一の敷地で建築されるものであること。ただし、市街化調整区域となる以前から存する建築物、又は、市街化調整区域指定後適法に建築され、築後10年を経過した建築物の敷地面積が300平方メートル未満の敷地において、これを300平方メートルまで拡張する場合は、この限りではない。

(施設基準等)
3 既存の用途と同一用途の建築物であること。ただし、一戸建ての住宅を第一種低層住居専用地域の基準に適合する兼用住宅とする場合は、この限りでない。
4 共同住宅等の増築、建て替えにあたっては、戸数増を伴わないこと。

(略)


1 本基準は、基準第12号及び第23号により許可された建築物(市街化調整区域となる以前に建築された建築物を含む)の増築、建て替えには適用しない。

※出典:「『都市計画法に基づく市街化調整区域の立地基準及び開発許可の基準の一部改定について』に関する意見公募に対して寄せられたご意見について」(横浜市立中央図書館蔵)
※「注」で触れられている基準第12号とは「屋内運動施設内において行なう建築行為等の特例措置」、第23号とは「墓園における付属建築物の建築行為の特例措置」であり、住宅の建て替えには関係がない。

上の引用部分を要約すると、市街化調整区域であっても「既存建築物」であれば建て替えが可能ということだ。
もちろん、このような救済措置がいつまで続くかは誰にもわからないが。

このような救済措置があることを暗に買主に伝えるために、不動産業者は「旧既存宅地」という言葉をわざわざチラシに掲載しているのだ。
不動産業者の言いたいことは次のようなものになる。

「現時点では建て替えは可能ですよ、でも将来は分かりませんよ、どうぞご自身で判断してください。」

買主が物件を購入して損をしたとしても、業者としての説明責任はこれでいちおう果たしたことになる。

まとめ:土地の売却で利益を得るつもりがないなら検討の余地あり

現時点で建て替えが可能だからといって、10年後・20年後にアパートの建て替えができるという保証はない。
既存アパートの家賃収入のみで投資資金を回収できる見込みがあるのなら、「旧既存宅地」物件も面白いかもしれない。
出口戦略は、捨て値での売却しかないだろう。

「旧既存宅地」の大きなデメリットには、

  1. 融資を受けにくい。
  2. 空室が多くて売却しようとしても、安値で買い叩かれる可能性が高い。

という2点が挙げられる。

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